KRIニュースレター 第53号
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《新素材》 デバイスマテリアル研究部 蓄電デバイスワンストップサービス デバイスマテリアル研究部長 樋口 章二 デバイスマテリアル研究部では、材料の機能性向上をキーワードに、機能性粒子や機能性色素に関わる開発に取り組んでいます。粒子・色素の化学組成は同じであっても、形状・大きさ・ロットが異なれば発現する機能の程度が千差万別であることは、開発現場に携わる方であれば誰もが感じておられることです。最近では、各種分析結果に相違が認められなくても、性能に差異が生じているという声を聴くことが少なくありません。当部では、原材料からデバイスまでの間に材料が経由するすべてのプロセス・履歴を定量・可視化することで性能差異を明らかにすることを基本スタンスに、新たな材料開発を目指します。 技術領域 ●機能性粒子 ●金属ナノ粒子 ●機能性色素 ●水熱・ソルボサーマルプロセス ●超臨界ソルボサーマル ●In-situラマン追跡水熱・ソルボサーマル ●樹脂成型加工 KRIからの新規提案 ◆光透過性熱伝導材の開発 樹脂に熱伝導性フィラーを高濃度に添加しても、光透過性を損なわないように、フィラーの表面屈折率制御を検討しました。具体的には、フィラーの表面を、樹脂/フィラーの間の屈折率を有する層で修飾し、屈折率差を小さくすることを検討しました。その結果、アクリル樹脂以外に、シリコーン樹脂ベースでも光透過性を有する熱伝導材を開発しました(右図)。LED照明等に使われる光学部材で、光透過性が要求され、熱でお困りの用途への活用が期待できます。 シリコーン樹脂ベースの試作材(全光線透過率54%[0.5㎜厚]) ◆エレクトロスプレー法を用いた非真空製膜プロセスの開発 エレクトロスプレー法で生成した微小な液滴を基板上で反応させることにより、半導体や金属のナノ結晶薄膜を作製するプロセスを開発しています。低温(100℃以下)プロセスのため、耐熱性の低い樹脂等のフレキシブルな基材への製膜が可能です。また、基板到達時は液滴の状態であることから、多孔質の基材や紙、繊維の内部に侵入させることも可能です。フレキシブルデバイス、ウェアラブルデバイスへの応用をご提案します。 製膜装置の概略図と作製したTeナノ結晶膜の表面SEM像 ◆湿式プロセス中の粒子形成過程解明に関する基礎研究 湿式プロセス中の粒子形成過程を分光学的に観る手法として、短焦点プローブを用いたラマン測定に関する基礎研究を行っています。当部では、室温近傍環境だけでなく、高温高圧下での粒子状態の観察が可能です。これまでに酸化物粒子の溶解挙動の解明を行ってきました。本手法は、無機物・有機物に広く適用可能です。 Nb2O5の溶解挙動観察例
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