KRIニュースレター 第56号
13/20

 ◆再生可能エネルギーを用いた新燃料(アンモニア)による燃料電池システムの開発 水素社会における重要なエネルギーキャリアの一つとして注目されているアンモニアを用いた新しい燃料電池システムの開発を進めています。アンモニアは①再生可能エネルギーで発電した電力によるオンサイト製造(常圧電解合成)が可能である、②質量水素密度・体積水素密度ともに大きく、高濃度の水素貯蔵が容易である。③アンモニアを直接供給する燃料電池の燃料として使用すれば二酸化炭素が全く発生しないことなどの利点が挙げられ、地球に優しいエネルギーシステムとしての期待が高まっています。 新エネルギーデバイス開発部では、アンモニアの「貯蔵・輸送」と「利用」について研究開発を進めています。「貯蔵・輸送」に関してはアンモニアの漏えいをゼロに近づけることを目的として、反応制御が容易なアンミン錯体の形態で貯蔵する方法に着目しました。金属ハロゲン化合物アンミン錯体を用いて、アンモニア燃料輸送時の貯蔵技術と使用する際のアンモニア分離技術の開発に取り組んでいます。 また、塩化ニッケルアンミン錯体を充填実装した熱交換器モデルなどを検討しています。「利用」に関しては、アンモニア直接供給型のSOFCに着目しました。300W級のスタックを用いてアンモニアの直接供給による発電が可能であることを実証し、その特性を基にモジュールおよびシステムの設計・試作を行いました(右写真)。 さらにそのシステム試作機を用いて、実用レベルでの性能確認を行いました。本機は300W相当ですが、家庭用コージェネレーションに適用されているサイズの700W以上のシステムも試作可能です。このような実績と知見に基づき、スタックやホットモジュールの開発、さらにはシステム機試作まで、さまざまな開発ステージでの研究開発を受託支援いたします。 直接アンモニア供給型SOFC ◆高性能ガス分析装置を用いた燃料電池、環境浄化触媒、吸着材の開発支援 産業界や交通機関から排出される環境負荷物質を抑制するための技術開発支援を目的として、2016年度に高性能ガス分析装置を導入しました。この装置を用いるとホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、COx、NOx、NH3、H2Oなどを含む約40種類のガス成分を同時に連続測定することができます。この分析装置は次のような受託研究開発において強みを発揮します。 ・各種燃料電池出口ガス組成の連続分析 ・各種排ガス処理触媒の開発 ・大気中のVOC濃度測定 ・特定成分を除去するための触媒、吸着材の開発 ・ガス中に共存する複数成分が触媒、吸着材の性能に及ぼす影響の評価 他 同時分析可能なガス成分例と検出限界 測定データの例

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る