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2014.10.21

X線回折を用いた手法で、ご飯のおいしさ低下(老化)の定量化に成功

 大阪ガス株式会社(社長:尾崎 裕、以下「大阪ガス」)と株式会社KRI(社長:住友 宏、以下「KRI」)は共同で、ご飯のおいしさの低下(老化)1)をX線回折により定量的に評価する手法を開発しました。

背景

 大阪ガスでは、2013年4月にエネルギー技術研究所内においしさ・健康調理ラボラトリーを設置し、ご飯のおいしさの向上、老化の抑制メカニズムの研究に取り組んできました。一方、KRIでは、X線回折による金属や酸化物、活性炭などの評価を行っており、その技術を応用しご飯の老化評価手法2)の開発に取り組みました。

本技術の特徴

 従来のX線回折による老化評価は、炊飯前の結晶構造と老化による結晶構造の両方に起因するピークが混在して得られるため、老化の進行程度(老化度)を判別するのが困難でした。今回、サンプル調整などを含む分析手法を確立し、老化によるピークのみを検出することで、老化度の定量的な評価に成功しました(図1)。
 本手法を用いて、炊飯後のご飯を異なる環境(冷凍庫、冷蔵庫、室温)で保存し、ご飯の老化度を評価したところ、室温保存に比べて冷蔵庫で保存した場合は老化が2.0倍促進され(表1)、冷凍庫で保存した場合は老化がほとんど進んでいないことが判明しました。
 今後、老化度の定量評価による適切な賞味期限の設定、老化を抑制できる炊飯手法の開発や他のデンプン食品への活用などに応用したいと考えております。
 なお、本手法の一部は、カナダで行われた国際会議IUFoST(International Union of Food Science and Technology、平成26年8月17日〜8月21日、モントリオール)で発表しました。

応用例

1)適切な賞味期限の設定
 スーパーやコンビニのおにぎりやお弁当などは、炊飯してから店頭に並ぶまでの運搬・保存状況によって老化度合いが左右されるにもかかわらず、一律の賞味期限で表示されていました。
 より適切な賞味期限の設定などへ、本手法の利用が考えられます。
2)炊飯器開発への応用
 近年、高機能炊飯器に代表されるように、おいしいご飯を簡単に炊くことができるようになってきました。また同時に、老化を抑制する工夫もなされており、本手法を用いることで、おいしさが長持ちする炊飯器や炊飯手法、老化抑制剤の開発を促進することができると考えられます。
3)他のデンプン系食品への応用
 本技術はデンプンに共通した糊化・老化メカニズムに基づいた計測手法であり、お米以外にもパンやうどん、和菓子など幅広いデンプン系食品への応用が期待されます。
 実際にパンの老化を評価したところ、添加物の存在により老化を抑制する結果が得られています。

用語解説

1) ご飯の老化
お米やパン、麺類といったデンプン食品では、調理前は均一な結晶構造(βデンプン)を有しており、加熱調理により“糊化”することで、結晶構造の壊れた“αデンプン”構造になります。しかし、保存による時間経過とともに“老化”することで、水分や熱的安定性が減少し、結晶構造が一部元の状態に近い“β’デンプン”構造になります。X線回折ではβデンプンやβ’デンプンなどの結晶構造を数値として検出することができます。http://www.food.hayashibara.co.jp/product/treha/fushigi.htmlより引用、編集)
2) おいしさの評価方法
人による食味官能試験と科学的分析手法とに大別され、前者では所定の条件で準備したご飯の食味をパネラーにより評価します。この試験は実際に人が評価することで、総合的な感覚としておいしさを評価できるが、品種ごとの違いや経時変化などの違いを評価するのは困難です。そのため、成分分析や物理特性(硬さや粘りなど)、味、香りなどといった科学的分析手法による客観的評価の試みが各種提案されています。

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解析研究センター