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2013.10.7

ポリマーコンポジットの熱膨張を効果的・効率的に制御、適用対象ポリマー種を大幅に拡大

―負の熱膨張性ナノ粒子を均一分散したマスターバッチの作製技術を開発―

 株式会社KRI(本社:京都市下京区、社長:住友 宏)は、従来よりも少ない量のフィラーで、より効果的・効率的に様々なポリマー材料の熱膨張の制御を可能にする技術を開発しました。

背景

 通常、物質は温度が上がると長さや体積が大きくなります(熱膨張)。これは、熱エネルギーによって物質を形作っている原子の間隔が広がるためです。こうした物質の熱膨張は、例えば、異種材料を組み合わせた複合材料(例えば半導体パッケージ等)において、各構成材料の熱膨張の程度が異なるために異種材料の接合界面の剥離や破壊が起こる原因となります。また、精密機械部品や光学部品では、精度の狂いの原因となります。

 近年、様々な機器の小型化・軽量化に伴ってポリマー材料が多用されるようになりましたが、ポリマー材料は熱膨張率が大きく、ポリマー材料と他材料との熱膨張の差による歪み発生の抑制やポリマー自身の熱膨張制御等が求められるようになってきています。こうしたニーズに対して温度が上がると縮む(Negative Thermal Expansion (NTE))物質をフィラーとしてポリマーに混合することにより熱膨張を制御するアイデアが検討されています。NTE物質としては、例えば、広い温度範囲に渡って高い負の熱膨張率を示すZrW2O8(熱膨張率 = -9 〜 -5 ppm/K)がよく知られています。しかしながら、ほとんどのNTE物質は無機物であり、有機物であるポリマーと親和性が低いため、ポリマーに均一に混ぜるには多大な手間がかかります。こういった背景も有り、ポリマー材料の熱膨張制御は未だごく一部のポリマー(例えばエポキシ樹脂など)でしか検討されていません。

本技術の特徴

 KRIでは、ポリマー材料の熱膨張制御のニーズに答えるべく、鋭意検討した結果、上記NTE物質(特にZrW2O8)を従来よりも簡単な工程で汎用ポリマーに分散する技術を開発することができました。具体的には、KRIの開発技術であるグラフトポリマーを用いた有機―無機複合化技術(特許第4868909号)をNTE物質ナノ粒子に適用することで、NTE物質ナノ粒子を高濃度かつ均一に含有するマスターバッチ(2を作製する技術を開発しました。このマスターバッチと相溶可能なポリマーには、NTE物質ナノ粒子の均一分散が可能となります。
 現在、熱膨張抑制効果は、ZrW2O8ナノ粒子を2.6体積%(10重量%)含むコンポジットの場合、その熱膨張率は元のポリマーの約84%に低下することを確認しています。これはどれくらいの熱膨張抑制効果かというと、例えば、およそ12体積%(20重量%)のシリカ粒子を含むコンポジットと同レベルです。このようにNTE物質ナノ粒子を用いると、シリカ粒子の数分の1の体積分率で同等の熱膨張抑制効果が得られることになるので、ポリマー材料の機械的物性(1をできるだけ下げずに熱膨張を抑制したいといった、従来では困難だった要求にこたえることができるものと考えられます。
 従来、熱膨張制御の主な取り組みは、エポキシ樹脂等一部のポリマーに限定されていましたが、現在本技術にてマスターバッチ化可能なポリマー種は、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリシクロオレフィン、ポリオレフィン、ポリシロキサン、エポキシ樹脂、ならびにこれらと相溶可能なポリマーまで大幅に拡大しております。
 本技術の応用展開先は、熱がかかる異種材料界面、樹脂製精密機械部品、封止材、光学樹脂部品などを挙げることができます。
 本技術に関して、発展研究(例えば、NTE物質(特にZrW2O8)ナノ粒子のさらなるナノサイズ化、マスターバッチ化可能なポリマーの検証や追加等)、および応用開発研究、等に関する受託研究を募集します。

用語解説

1) 機械的物性
材料力学・材料強度学などにおいて、材料がその種類のちがいにより引張り・圧縮・せん断などの外力に対してどの程度の耐久性をもつかなどの諸性質です。材料加工のしやすさ、加工された工業製品の耐久性などの尺度となります。
2) マスターバッチ
マスターバッチとは、樹脂中に添加剤、フィラー等を高濃度に分散加工をしたもので、樹脂ペレットと同様な粒状にして取り扱いやすくしたものをいいます。原則として成形に使用する樹脂をベースにして作ります。マスターバッチは、最終的に製品が必要とする添加剤やフィラー量に応じて樹脂に混合して用いられます。マスターバッチを用いることにより、添加剤やフィラーを樹脂に均一に混合できること、添加剤やフィラーを樹脂に直接混合するよりも正確にそれらの濃度を制御できること、成形メーカーにとって添加剤やフィラーの取り扱いが容易になるなどの利点があります。

この内容に関するお問い合わせ

新機能性材料研究部