ここに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。
検索日と情報が異なる可能性がございますので、あらかじめご了承ください。
2013.6.19

ESD法による新規透明導電膜の開発

 株式会社KRI(社長:住友宏)は、透光性と導電性に優れ、屈曲性にも強い透明導電膜1を開発しました。タッチパネル2の普及や太陽電池の開発が進むなかで、より高性能な透明電極材料の需要が増しています。今回開発した透明導電膜は従来の代表的材料であったITO3に比べ、透光性と導電性を維持しながらも屈曲性に優れ、低コスト化の可能性もあるため、フレキシブルデバイスへの応用が期待されます。

背景

 タッチ式パネルディスプレイの普及に伴い、より大型のタッチパネルの需要が見込まれています。またクリーンで安全なエネルギー需要の面から、太陽電池4等の開発が進んでいます。しかし、そのためにはそれらデバイスに必要不可欠な材料である透明導電膜の更なる高導電化が必要です。一方、次世代のディスプレイとして期待されているフレキシブルディスプレイに対しては、透明導電膜に屈曲性も求められています。現在まで透明導電膜の主流であったITOはフィルムでは高導電化が難しく、またセラミックス5であるため屈曲性に乏しく脆いという点があります。さらにITOフィルムはその製造工程において真空装置を必要とする上、希少金属インジウム6を必要とするため高コストであるという課題もあります。
 KRIは、上記の課題に対して優位である、導電性ポリマー7と金属ナノ粒子を複合化した透明導電膜を開発しました。

技術の特長と応用展開

 今回、透光性と屈曲性に富むが導電性に乏しかった導電性ポリマーを、ESD法8という手法で金属と複合化することで導電性を飛躍的に改善させることに成功しました。これによって直径10〜20nmの銀ナノ粒子を微粒化させたまま導電性ポリマー(PEDOT9)と極少量複合させることができ、透光性を維持しながら導電性を2〜10倍程度まで改善させました。本手法は、スマートフォンやタブレットの他、次世代のシートディスプレイの製品化に大きく寄与します。 表 ITO、従来の導電性ポリマーと新規導電膜の比較一覧

 KRIは、本技術を基にした基盤技術の研究開発、及び商品化に向けた応用研究の受託を募集しています。

用語解説

1) 透明導電膜
主に可視光(波長:380〜750nm)の透光性に優れ、かつ電気的抵抗の低い特徴を持つ材料を加工したフィルムのことであり、ITO(酸化インジウムスズ)や導電性ポリマーなどが用いられます。透明かつ電気をよく通すという特異な性質を利用してノートパソコンや携帯電話の表示素子用電極、太陽電池用電極、プラズマディスプレイパネル用電極などに用いられています。
2) タッチパネル
液晶パネルのような表示装置とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた電子部品であり、画面上の表示を押すことで機器を操作する入力装置のことです。接触による位置入力情報を伝え、かつ表示装置の障害にならないように、透明な電極材料を必要とします。
3) ITO
酸化インジウムスズは酸化インジウム(III) (In2O3)と酸化スズ(IV) (SnO2)の無機化合物であり、電気伝導性と透明性に優れるという特徴があります。焼結により結晶化させることで金属に匹敵する導電性を発現しますが、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂フィルム上に形成する場合は高熱処理ができないため、やや導電性が下がってしまいます。
4) 太陽電池
光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する電力機器のことです。機器表面に用いる電極層には、光吸収層より先に太陽光が透過するほど透明性が高いこと、光吸収層中での光路長を増加させるために高い光散乱能を有すること、そして取り出せる電力を大きくするために低抵抗であることが求められます。
5) セラミックス
主に基本成分が金属酸化物で高温での熱処理によって焼き固めた焼結体をのことを指します。一般的にはガラスや陶磁器全般を指すこともあります。硬度は高いが脆性破壊しやすい、耐熱性に優れるが熱衝撃破壊を起こしやすい、金属より軽くプラスチックより重いなどの特徴があります。
6) インジウム
ITOを構成するの主成分の一つであり、ITOフィルムなどのディスプレイ用途の他、他の元素と化合物半導体を形成する性質など、エレクトロニクス分野での活用が注目されている希少元素です。主な原産地は中国(雲南省など)であり世界の生産量の50%以上を占めていますが、採掘現場での環境破壊が深刻化しており、生産量の見通しが不安定な側面もあります。
7) 導電性ポリマー
電気伝導性を持つ高分子化合物のことを指します。代表的なものとして、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが挙げられます。導電性高分子は導電性だけでなく製膜性を有するので、フレキシブルディスプレイなどへの応用が期待されています。
8) ESD法(静電噴霧、Electrospray Deposition)
接地した被塗物を陽極、塗料噴霧装置を陰極として、両極間に高電圧を与えて静電界をつくり,噴霧させた塗料粒子を負に帯電させて,反対極である被塗物に効率よく塗料を付着させる塗装方法のことです。塗料の液滴を非常に微細な粒子(数μm〜数nm)にできること、塗料のロスが少ないことなどが特徴です。主に車体の塗装などに応用されています。
9) PEDOT
ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン (Poly-ethylenedioxythiophene)の略称で、導電性ポリマーの一種であり、高い導電性と耐久性が特長です。しかしITOと同等の導電性を発現させるためには膜厚を厚くする必要があり、透明性と両立させることが困難でした。

この内容に関するお問い合わせ

構造制御材料研究部