ここに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。
検索日と情報が異なる可能性がございますので、あらかじめご了承ください。
2010.10.4

100%リサイクル可能なポリマー系複合材料の開発に成功

―マテリアルリサイクルへの新しいアプローチ―

 株式会社KRI(本社:京都市下京区、社長:成宮 明)は、100%リサイクル可能なポリマー1)系複合材料の開発に成功しました。

背景

 ポリマーは各種のフィラー2)と混合して複合材料とすることで、力学的性質や熱的性質を改善することができます。その際に用いられるフィラーは様々な組成、形状の無機材料が多く、主なものとしては、繊維状のガラス繊維や板状のタルク、球状の炭酸カルシウムなどがあります。
 これら無機材料を混合する複合材料をリサイクルするには、2つの課題があります。1つは分別の問題です。複合材料の有機成分と無機成分の分別は一般的に困難です。2つめは物性劣化の問題です。複合材料では、物性劣化が顕著なため元の材料と同等の品質を満たすことができず、同一用途への再利用は困難です。

本技術の特徴

 KRIでは、電界紡糸法によるポリマー系ナノファイバー3)のアプリケーション開発の知見を活かし、今回、有機材料であるナノファイバーをポリマーの補強材として利用しました。ポリマー/ポリマー複合材料4)、つまり、無機材料を含まない複合材料について総合的に検討し、100%リサイクル可能なポリマー系複合材料を開発することに成功しました。
 今回開発したポリマー系複合材料の特徴は、次の通りです。

1:100%リサイクル可能
表面処理剤を用いずオールポリマーの複合材料が得られるため、高温で溶融しペレット5)化することで、元の材料と同等の品質を満たすリサイクルが可能となります。
2:機械的特性
母材と類似の分子構造を有するナノファイバーによる複合化により、高伸度を有し、高強度材料として利用できます。
3:技術の応用展開の広さ
ナノファイバーの結晶化を促進することにより強度が向上します。他にも弾性率、バリア性6)が向上します。ナノファイバーの結晶化のレベルをコントロールすることにより、各ニーズに最適な複合材料を作ることができます。

応用分野

 今後は、川上から川下までの多様なクライアント様の実用化に向けたニーズに応じた開発を、ポリマー選定とその複合材料の試作・評価を通じて共同で実施していきます。また、新たな応用分野や応用技術に向けた共同研究のパートナーを併せて募集いたします。

用語解説

1)ポリマー
基本構造となる単一分子(モノマー)が2個以上化学的に結合して、形作られる化合物。一般的には数百から数万のモノマーが重合して巨大な(例えば、長い)分子を作った場合を指す。
2)フィラー
ポリマーを製品として使うに当たって、強度や耐久性などの諸性質を改善するために加える添加物質のこと。
3)ナノファイバー
極微小な繊維状物質の総称。
4)複合材料
2つ以上の異なる材料を一体的に組み合わせた材料のこと。
5)ペレット
粒状の形状をもつ成型用材料の一般呼称。
6)バリア性
水や酸素を遮蔽する性質。

この内容に関するお問い合わせ

スマートマテリアル研究センター(モビリティ/センシング)