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2007.8.29

バイオマス資源'キチン'のイオン液体*1を用いた
可溶化技術を開発

― 甲殻類外殻に含まれる未利用資源'キチン'の成形加工が容易に広範な工業材料利用に道 ―

  株式会社KRI(社長:中芝明雄)は、鹿児島大学大学院 門川教授と共同で、甲殻類の外殻に含まれる成分'キチン'を、イオン液体を用いて可溶化する技術を開発しました。
  この新技術を用いることで、現在廃棄されている'キチン'の特性を利用した新機能性材料の創生が可能となります。今後、材料メーカー等と共に、'キチン'由来機能性材料の実用化開発研究を行っていく予定です。

背景

  'キチン'や'セルロース'等に代表されるバイオマス資源は、地球温暖化の防止や循環型社会の形成のために産業への有効利用が大変重要視されています。
  中でも'キチン'は、甲殻類の外殻に含まれる多糖類の成分で、木材に含まれるセルロースに次いで地球上に多く存在する天然多糖高分子(有機化合物)で、抗菌性・消臭性・創傷治癒効果・生体親和性・生分解性等を有します。年間約10億トンから1兆トンが自然合成されているといわれていますが、堅固な水素結合構造によって不溶不融な特徴をもつため、工業材料への応用展開が難しく、その殆どが未利用です。
  'キチン'は一般の溶剤だけでは溶解しないため、強酸の多量使用や、塩化リチウムを使用することで、ごく一部の用途に利用されています。しかし、従来法では、人体や設備に悪影響を与える強力な溶剤や毒性のある溶剤の使用、反応後の溶剤除去プロセスの煩わしさ、これら製法が分子量低下を引き起こすため本来の'キチン'の特性が充分活かしきれないといった難点が多くあります。
  つまり、従来、'キチン'を成形体へ加工することは技術的難易度からかなり限定された範囲でしか実用化されておらず、バイオマス資源の有効利用を阻む大きな課題でもありました。

今回の成果と特徴

  当社は、これまでバイオマス由来材料の開発研究を手掛けてきましたが、今回、鹿児島大学大学院 門川教授と共同で、不溶不融といわれてきた'キチン'をイオン液体を利用して溶解することに成功し、'キチン'と'セルロース'の複合成形体を作成することができました。
  イオン液体は、不揮発性・不燃性・低毒性等の特性をもつことから'グリーン溶媒'といわれています。また、反応後の分離・再利用でリサイクル性に優れていることから、従来法と比べて加工プロセスが安全で、かつ製造コストも抑えられます。
  このイオン液体に'キチン'を溶解した後、「溶液」「イオン液体を含んだゲル状の成形体」「イオン液体を除去した成形体」という異なる状態から材料を創製することができ、かつこれらはそれぞれ異なる特性を持つことから、広い産業分野での利用が可能になると考えています。

  イオン液体を利用した天然多糖高分子(溶液)の特徴と、期待される応用事例は次の通りです。

1) 溶液状             ・・・電池電解質等
2) イオン液体を含んだゲル状の成形体・・・福祉ロボット用材料等
3) イオン液体を除去した成形体   ・・・機能性プラスチック、再生医療用材料等

  'キチン'は、'セルロース'と分子構造が似ています。'セルロース'は高結晶化を図ることで大変強度が高くなる'ナノセルロース'2)が知られており、'キチン'も同様に高結晶化を図ることで'ナノキチン'としてさらに高強度な新規材料になる可能性があります。
  このことから、当社では、当社の得意とするナノテクノロジーを駆使することで、ナノオーダーでの材料複合化や構造制御も行えることから、'キチン'の特性を活かした、より高機能な材料開発が可能になると考えています。
  当社は今後、'キチン'や'セルロース'といったバイオマスを有効利用するべく受託研究プロジェクトを立ち上げ、材料メーカー等と、イオン液体を媒体とした加工成形法の確立とともに、キチン由来機能性材料の実用化開発研究を行っていく予定です。

用語解説

1)イオン液体
室温でも液体で存在する塩をいう。通常「塩」は食塩のように常温下では固体だが、塩イオンを有機イオンに置換したイオン液体は融点が低く、室温付近でも液体で存在する。高いイオン電導性・不燃性・不揮発性などの特性を持つ。これまでは高温状態でしか発揮することができなかった物質の特性を、イオン液体を使うことにより室温付近で発現させることが可能となる。
2)ナノセルロース
セルロースの高結晶化を経て得られる。直径が数10ナノメートルで、長さが直径の数10〜数100倍程度の大きさ。見た目は微粉末。高強度な素材として知られているが、生産が難しく市販はされていない。

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構造制御材料研究部