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2007.5.18

チルド食品*1流通のトレーサビリティ*2に貢献する非破壊検査の基本技術を開発

株式会社KRI(社長:中芝明雄)は、従来不可能であった、包装食品の細菌汚染を非破壊で検査する新しい基本技術を開発しました。
これまで食品の非破壊・細菌汚染検査はその手法がなく不可能でしたが、この基本技術を適用したトレーサビリティシステムが開発・実用化できれば、チルド食品等の加工食品の流通途中や販売店頭において、全ての商品の非破壊・細菌汚染検査を行うことが可能になります。
当社は今後、本基本技術を基に、検査機械メーカーや食品包装・容器メーカー等と3年後の実用化に向けた研究開発を行う予定です。

背景

食品の安全・安心のための食品トレーサビリティが求められています
冷凍食品やレトルト食品が成熟市場であるのに対し、チルド食品(要冷蔵食品)は、高齢者や単身者、忙しい主婦層等による急速な利用拡大が見込まれており、大手食品メーカーや缶詰メーカーによる新規参入・事業拡大が図られています。
一方、健康志向の高まりや食中毒3)への警戒心から食品の安全に対する国民の関心は高まっており、トレーサビリティの導入等、食品管理に対する行政指導が進んでいます。
チルド加工食品の微生物汚染管理は、製造後に抜き出した製品サンプルの中身を取り出して、培養法や遺伝子増幅法による検査4)を行ないますが、出荷以降は、温度管理と消費・賞味期限という時限管理とに依存しています。
食品のさらなる安全・安心のためには、中身の状態までわかればよいのですが、食品の細菌汚染検査を非破壊で行う手法は現在まだありません。

今回の成果と特徴

[1]細菌の生成成分検知により、食品細菌汚染の非破壊検査を初めて可能にしました
当社は今回、食中毒の主原因である大腸菌やサルモネラ菌等が栄養成分を分解し増殖する際に生成する成分が包装容器からもれ出てくる点に着目し、この生成成分を検知することで包装を開封・解体することなく細菌汚染の検査が可能なことを確認しました。
[2]検査の所要時間は数秒から数分程度
対象となる食品によって検知時間に多少の差異はありますが、いずれも短時間でかつ簡便な検査が可能です。
[3]検知した情報から、過去の汚染履歴がわかる
食品出荷後のどの段階で管理不備等による汚染(腐敗)が発生したのか、検知した段階と情報により知ることが出来ます。
[4]小型携帯化すれば誰でもどこでも検査が可能に
この基本技術を適用した小型検査装置あるいは小型携帯装置が開発・実用化できれば、流通途中、一時保管、店頭における全品に対して検査を行うことも可能になります。
[今後]食の安全・安心に貢献する標準技術への期待
本技術は、今後益々重要視される食品トレーサビリティや'ユビキタス食の安全・安心システム5'等の取り組みに貢献する標準技術になることが期待できます。
今後の実用化に向けては、食品の種類や包装材料の組成による検知基準の最適化研究等を行う必要があります。当社では、保有する微生物・生化学に関する技術と高感度ガスセンサ等のセンサー開発技術をベースに、メーカー等のニーズに応じたセンサーや容器等の開発を進めていく予定です。

用語解説

1)チルド食品
−5〜5℃の温度帯で流通する食品。品質保持0℃に近い状態が望まれる。
ご参考:製造業におけるチルド温度帯製品(飲用牛乳、水産加工品、畜産加工品、惣菜・弁当等)の販売金額 7兆円
(農林水産省 平成9年 加工食品流通調査より)
2)トレーサビリティ
食品の安全を確保するために栽培・飼育から加工・製造・流通等の過程を明確にすること。また、その仕組み。
3)食中毒
食中毒の主原因(全体の65%以上)は、食品への細菌汚染(農林水産省 平成17年資料)である。細菌は、食品中の栄養成分(糖)を分解しながら増殖する。
4)細菌汚染検査
食品の構成成分(タンパク質や糖など)と全く性質の異なる物資である金属等は、エックス線を利用して非破壊で行われている(異物混入検査)が、細菌検査は、細菌と食品素材の構成成分が類似の構成成分であるためエックス線などの物理的な方法では困難なことから、製品の製造出荷時に製品の中から抜き出した製品サンプルの中身を取り出して(サンプリングチェック)、培養法あるいは遺伝子増幅法による検査を行なっている。
5)ユビキタス食の安全・安心システム
農林水産省が開発を促進しているトレーサビリティ・システムの普及策の一つ。

この内容に関するお問い合わせ

センシングバイオ研究部