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2005.6.15

MEMS技術を駆使した3次元リアクターチップを開発しました

多様な形状・サイズのファイバーや粒子の開発が可能で、かつ試作からのスケールアップが容易になります

  株式会社KRI(社長 中芝明雄)は、MEMS技術1)を用いて、3次元マイクロリアクター2)を開発することに成功しました。3次元で化学反応させることにより、従来不可能であった、多様な形状やサイズのファイバーや粒子が開発でき、試作から量産化への移行がチップアレイモジュール3)にすることで容易になります。当社は、本成果を用いて、材料メーカーやデバイスメーカーなどと共同で本年10月から用途別開発プロジェクトを立ち上げます。

[背景]
  DNAチップやインクジェットプリンターヘッドに使われているMEMS技術は、ITやバイオ、センサーなどあらゆる分野と融合することで実用化が検討されています。最近では、ナノメートルからミクロンオーダーで生成物の構造を制御することへの要求が高まってきたことから、化学分野との融合によるマイクロデバイスの研究が注目され始めています。その1つであるマイクロリアクター(微小化学反応装置)は、微細な流路を化学反応装置とすることで材料を生成しますが、これまでは半導体製造プロセスでしか作ることが出来ず、製造工程が複雑で手間がかかっていました。また、化学反応場が2次元(平面構造)のものしかなかったため、生成物の形状やサイズをコントロールすることが困難でした。

[本開発の成果と特徴]
  そこで当社は他社に先駆け、MEMS技術の中でもマイクロ流体制御技術4)光造形技術5)などを駆使し、流路が3次元の構造をもつマイクロリアクターを開発することに成功しました。当社のノウハウにより、流路を立体構造にし、反応場を3次元にする設計ができるので、数種類の原料液を任意に組み合せ、かつ形状やサイズを任意に設定することができ、あらゆる用途に応じた多様な形状やサイズのものが生成できるようになります。
  当社は今回、このリアクターを用いて、直径10〜130マイクロメートルの中空構造のアルギン酸カルシウムファイバーを生成したほか、浄水器や空気清浄機のフィルターに使用される分離膜中空糸のような中空構造のファイバーに、粒径200ナノメートルのSiO(シリカ)粒子を内包させることにも成功しました。
  また、無機系のファイバーや、有機-無機ハイブリッド系の粒子などの様々な素材や形状の材料開発も行っていきます。

  当社が開発した3次元リアクターの主な特徴は次の通りです。

1)装置について       ①光造形法によりリアクターチップを数時間で製作。
                               ②チップアレイモジュールにすることで量産化への移行が容易。
2)生成物について    ①種類:ファイバー、粒子など。
                               ②サイズ:ナノメートルからミクロンオーダーまで調整が可能。
                               ③構造:多孔質、多層、中空、粒子形状などの設計が可能。
3)適応材料について・・・ 有機系、無機系、有機-無機ハイブリッド系など広範な組合せが可能。

  今後当社では、材料の高機能化・高付加価値化により新規参入や新市場開拓、販路拡大を望む材料メーカーや、MEMS関連装置メーカー、デバイスメーカーなどと共同で用途に応じたリアクターの最適化研究を行う予定です。
  なお、本装置の開発にあたっては、京都大学の田畑 修教授の協力を得ました。

用語解説

1) MEMS技術
『微小領域に機械的・電気的システムを融合させた技術』と定義される技術分野。 マイクロマシン(10mm立方以下の大きさの超小型機械)に代表されるように、LSIなどの集積回路の製造において開発されてきた半導体の微細加工技術を応用した、微細な電気部品や機械部品を集積化した極小システムの総称で、ナノオーダーのものも含めます。
2) マイクロリアクター
マイクロチャンネルリアクターとも呼ばれ、数マイクロメートルから数百マイクロメートルサイズのマイクロ流路を有する微小反応器の総称。
3) チップアレイモジュール
複数のチップが一つの線あるいは面上に整列配列された場合の部品をチップアレイモジュールという。(半導体デバイスや光学微小デバイスは、一般的に1mm角のような微小な基板上に形成されるがこのような一つのデバイスをチップという。チップは単独では機能を持たないが、複数のチップを組み合せ結合させることで一つの機能を持つ電子・光学部品とすることができる。この部品のことをモジュールという。)
4) マイクロ流体制御技術
マイクロスケールに起因する流体に働く物理則をコントロールする技術。 重力よりも摩擦力(空気抵抗・付着力など)、慣性力よりも粘性力、体積力よりも表面力(表面張力・界面張力)が極端に大きくなり、従来のマクロスケールとは全く異なる液体の挙動となります。
5) 光造形技術
三次元CADシステムを応用し、紫外線を当てると固まる樹脂によって、金型をつくらず模型を極短時間で作成する技術です。

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スマートマテリアル研究センター(モビリティ/センシング)