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2020.7.7

磁極を自在に配置できる磁石を開発

 株式会社KRI(社長:川崎真一)は、同志社大学と共同で磁石の磁極を自在に配置できる技術を構築し、新規構造を有する磁石を開発しました。
 現在普及している磁石には、上下面(表裏面)に異なる極(SとN)の構造を持つ磁石(図1)と、リングに対して内側から外側に向かって異なる極(SとN)の構造を持つ磁石(図2)があります。一方、今回開発したコイン形状磁石は、上下面が同じ極N(Sも可能)で側面が異なる極S(上下面がS極の場合はN極)の構造を持つユニークな磁石です(図3)。また、球の大円周(地球では赤道にあたる)がN極(S極も可能)でそれ以外はS極(大円周がS極の場合はN極)である中空球形状の磁石の試作にも成功しました(図4)。
 これまでにはない新しい機能性磁石として各方面での応用が期待されます。

背景

 今日、磁石の粒子をプラスチックやゴム等の樹脂に混合し、成形加工して得られるボンド磁石が普及しています。ボンド磁石は、高い寸法精度と複雑形状の加工が可能で量産しやすい磁石として電子・電気機器に利用されています。
 これまでKRIでは同志社大学と共同で流動性のある磁石(液体磁石)の研究を進めてまいりました。液体磁石とはその名の通り、液体としての流動性を持ちながら、磁石の特性を持つという特徴があります。
 この度、液体磁石の技術を応用して、従来のボンド磁石とは製造プロセスの順序を変えることで、磁極を自在に制御できるボンド磁石の作成技術を構築し、その一例として新規でユニークな磁極をもったコイン形状ボンド磁石や中空球状ボンド磁石(以下、あわせて「本開発品」とします)を開発しました。

技術の特徴と応用展開

 従来の磁石の磁極は、必ずN極とS極の位置がほぼ対称で、その表面の面積や磁石の強さはほぼ均等です。しかし、本開発品では、N極とS極の位置が大きく非対称で、その表面の面積や磁石の強さは不均等になります。

 コイン形状ボンド磁石のユニークな現象として、例えば上面がN極の通常の大面積磁石板に対して、真上から本開発品のコイン形状の磁石を投げ落とすとコインは表や裏に着地するのではなく、必ず側面で立って着地(側面がS極なので側面で着地する)することが挙げられます。
 本開発品の応用として、コイン形状ボンド磁石は、小型リニアモータとして、中空球形状ボンド磁石は、自動車やロボット向けのジャイロセンサ等が考えられます。
 例えば小型リニアモータは、フレミングの左手の法則の原理に基づいて駆動力を発生させますが、リニアモータの磁石にコイン形状のボンド磁石を組み込むことでさらに駆動効率の向上を図ることができます。
 また、中空球形状ボンド磁石は、角速度を計測するセンサーとして使用でき、球の大円周のみというごく狭い範囲にN極の磁力を集中させることで、球の微妙な角度の変化を磁力の変化として、高感度に検出することが期待できます。
 今後、実用に向けた応用製品の開発・商品化をサポートするために受託研究を募集します。委託先には、実用化時に本技術の基本特許の実施許諾を行います。

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スマートマテリアル研究センター(モビリティ/センシング)