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2021.10.26

空気よりも優れた断熱性の紙 ―シリカエアロゲル/セルロースナノファイバー複合材―

日刊工業新聞2021年10月18日掲載
「断熱材、重さ紙の1/6 EVノイズ対策に提案」(pdf)
※日刊工業新聞社に転載許可を申請し、承認を受けて掲載しています。

 株式会社KRI(本社:京都市下京区、社長:川崎 真一)は、シリカエアロゲル粒子をセルロースナノファイバーで複合化することで紙のようでありながら空気よりも優れた断熱性の材料を開発しました。
※空気は動かなければ、金属の1万倍程度の断熱性を持っています。ダウンジャケットが温かいのはこのためです。

背景

 住宅や建築物の断熱化等、地球温暖化対策や、スマホなど電子機器の薄型・軽量化のための熱マネージメントの重要性など、優れた断熱材へのニーズが大きくなっています。
 現在普及している発泡ウレタンは、優れた断熱材として地球温暖化ガスをほとんど発生しないなど地球温暖化対策に資する一方で、素材によっては、燃焼時に有毒ガスを発生するものもあるという問題があります。
 また、発泡ウレタンの断熱性は厚さに比例するので、よりよい断熱性能を確保するためには一定以上の厚さにする必要があり、スマホなどの小型の電子機器には適用が難しいという問題もあります。

本技術の特徴

 シリカアロエゲル粒子は、空気の分子運動を抑制する微細な細孔から成る多孔体で、空気よりも優れた断熱性がありますが、少し力が加わると崩れてしまう脆くて扱いにくい材料であり、疎水性であるため、水に入れても均一に分散せずに2層に分かれてしまいます。今回、僅かな量のセルロースナノファイバーを用いて、シリカアロエゲルをネットのように包みこむような形状とすることで、水に分散しやすい複合材を作製することに成功しました。
 この水分散液を乾燥させると、セルロースナノファイバーの微細なネットで包まれたシリカエアロゲル粒子の集合体(セル)が連結した構造の複合材ができます(図1)。

この複合材には以下のような特長があります(図2、3)。

①空気よりも優れた断熱性

 室温での空気の熱伝導率は0.026W/m・Kですが、本複合材の熱伝導率は0.015-0.022W/m・Kと、優れた断熱性を示します。

②紙の6分の1の軽さ
 本複合材の密度は0.13g/cm3で非常に軽いです。(例:上質紙など: 0.80〜0.90g/cm3

③優れた加工性
 0.2mm程度から数mmの厚さのシートを作製することが可能です。また、できたシートは、紙のようにハサミで切ったり、曲げることができます。

④簡単な製造方法
 水分散液の乾燥のみで成膜でき、金属などの基材に塗布して用いることもできます。

 また、セルロースナノファイバーのネットは非常に細かく、シリカエアロゲル粒子が粉落ちししないため、精密機器の断熱材として利用することも可能です。

今後の展開

 今回、開発された技術を用いると、紙のように薄く、紙よりも軽い断熱シートを作ることができます。このように軽量で薄い断熱材は、スマートフォンなどのスペースや重さが制約される精密機器の熱マネージメントに最適で、CPUやバッテリーなどのヒートスポット解消など幅広い用途に応用できます。
 また、自動車、住宅、冷蔵庫などへも応用が可能であるため、住宅等での結露防止や家電の省スペース、省エネにも貢献します。結露防止等にも利用でき、将来的には分厚いダウンジャケットの代わりにTシャツで防寒できることも考えられます。

用語解説

シリカエアロゲル
1〜3nmのシリカ(二酸化ケイ素)の骨格と数十nmの空間から成り、気孔率が90〜95%で密度が0.12g/cm3程度の材料です。数十nmの空間は大気圧の空気分子の平均自由行程の68nmよりも小さいので空気分子の運動を抑制し、熱伝導率0.012W/m・Kの断熱性を実現しています。
セルロースナノファイバー
セルロースを解繊して得られるミクロフィブリル(直径約20nm)やエレメンタリーフィブリル(直径約5nm)の総称です。原料や製造方法によりますが、比重が1.6、強度は約10GPa、弾性率は約145GPa、線膨張係数は約0.1ppm/Kであり、軽くて強く、熱による寸法変化が小さい特長があります。フィラーとして樹脂と複合化することで強度の向上や熱膨張の抑制ができます。また、水中での微粒子の分散性向上やチキソ性の増粘剤として塗料、化粧品や食品への添加など様々な利用が期待されています。

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構造制御材料研究部