京都大学名誉教授、工学博士
中條 善樹(ちゅうじょう よしき)
「受託研究を有効に利用して得をしませんか」
民間企業、特に材料メーカーの研究所では自社の持っている材料・技術を利用して新規用途開発を行おうとする場合には、そのニーズに合った材料であるかどうかの特性について予備評価が必要となる。一方、すでに顧客がついている材料では、いわゆる「クレーム処理」と呼ばれる改良研究を求められる機会が多い。すなわち、顧客の要望に応じて、もう少し耐熱性を上げて欲しいとか、この溶媒に溶けるようになりませんか、などと求められることがよくある。それに対してきちんと応えられない場合には、別のメーカーの材料に乗り換えられてしまうことも少なくない。
これらの例を出すまでもなく、研究所で材料開発や改質研究を進めるために必要となるのが、その実験・試験・分析をするための「人材」「装置」「知識」そして「原材料」である。特に、このうち「人材」すなわち「人件費」と「装置」いわゆる「設備投資」にかける費用はバカにならない。それだけの需要があり、将来にわたって必要となる場合には、もちろん費用をかける意味があり、その元を取り返せることは言うまでもない。問題は、少し試してみたいという予備検討の場合である。
このような企業における研究の予備検討を行う手段として「受託研究」の利用は有効である。外注した予備検討でうまく行くという目途が立った時には、改めて自社の研究所で本格的に進めることができる。この「受託研究」のメリットを今一度考えてみることにより、結果として得になることも多い。是非その可能性を考えてみることをお勧めする次第である。