固体²⁹Si-NMRによる分析

固体材料や、固体表面の修飾層について、種々の核種(C, Si, Li, P, B等)の
化学結合状態や成分比を、固体状態のままお調べします。

分析物に応じて難易度は様々。特性・目的に応じて、効果的な分析手法をご提案いたします。
固体状態の構造、表面処理・改質の効果等を可視化します。

固体NMR(核磁気共鳴装置)の特徴

 試料を溶媒等に溶解させることなく、固体状態のままサンプル管に充填し、強磁場中で高速回転させながら測定することで、材料全体での平均的な化学構造や成分比、分子運動性に関する情報を得ることができます。弊社では、日本電子製の400mHzのNMRを2台所有しており、急ぎの長時間測定にも対応しております。

● 測定可能核種
 結晶・非晶等の構造に関係なく、目的の核種を直接観測できます。様々な核種に対応していますので、ご相談ください。(13C, 6Li, 7Li, 31P, 29Si など)

● サンプルスピニング、試料量
 Z軸から54.7°(Magic Angle)傾けた軸を中心に、10kHz程度の速さで高速回転させることで、空間的異方性を平均化させながら測定します。固体NMRでは、この異方性相互作用に由来するサイドスピニングバンドが出現しやすく、より高速で回転させることで抑制し、先鋭化したピークを得ます。
 弊社で保有している4mm試料管(試料量〜300mg程度)の最大回転周波数は15kHzです。試料管に充填できる試料量は試料管のサイズによって異なります。試料管が小さいほど高速で回転させることができますが、充填量が減るため感度が低下します。

● 各測定方法(パルスシーケンス)の特徴
  分析物の特性・目的に応じて、次の3種類の測定方法を使い分けます。

1. シングルパルス
観測核種を励起して直接観測する手法です。観測核種の緩和時間が測定時間に影響を与えるため、核種によっては長時間積算を必要としますが、¹H核を含まない(または少ない)試料や、定量性を重視する場合に有用な方法です。

2. DDMAS(Dipolar Decoupling Magic Angle Spinning)法
シングルパルスにハイパワーデカップリングを加えた手法で、観測核種を励起してデカップリングしながら測定します。¹H核を含み運動性が高く、定量性を重視する場合に有用な方法です。

3. CPMAS(Cross Polarization Magic Angle Spinning)法
¹H核の磁化を励起した後、交差分極で観測核種へ磁化を移動させ、ハイパワーデカップリングを行いながら測定します。¹Hを開始磁化としているため、高感度かつ短時間で測定が可能です。
¹Hや¹⁹F核が近傍にあり、結晶性が高い試料に有効な手法です。一方、運動性が高い試料や定量を目的とする場合には適しません。

応用・ご利用事例

● リチウム電池の負極材、正極材、固体電解質の構造解析・劣化解析 → 測定核種 ⁶Li,⁷Li,²⁹Si 等
 (グローボックス内での不活性ガス下試料充填にも対応しています。)
 関連ページ:リチウムはどうなっている?固体NMRで材料の健康診断

● 無機材やフィラー等微粒子の表面修飾層(下記事例参照)や固体に吸着した分子

● 溶媒に不溶なポリマーの構造解析

● 医薬品結晶多形

● 炭素膜、多孔質材料、木材、ガラス、ゴム、鉱物、セラミックなど

²⁹Si-NMR : シランカップリング剤の付着状態解析事例

 シランカップリング剤は、無機材やフィラー等の表面改質・機能化、分散性・密着性向上等に幅広く利用されています。近年は5G普及に伴い、半導体や電子基板材に用いられる低誘電樹脂との密着性改善のため、プライマーとしての需要も高まっています。
 シランカップリング剤で表面処理したシリカ粒子を固体²⁹Siで測定し、基材表面に化学結合したシランカップリング剤の結合状態について解析した事例をご紹介します。

 CPMAS法によるスペクトル(図1)から、シリカ粒子由来のQ単位について、Q₂,Q₃ピークが処理後に減少していることが分かります。また、シランカップリング剤由来のT単位について、T₁,T₂ピークが検出されていることから、Q₂,Q₃の水酸基にシランカップリング剤が化学結合したことが分かります。
 シランカップリング剤の付着量が少ない薄膜の表層分析には、XPS、AESやTOF-SIMSなどを組み合わせることでさらに詳細分析が可能となります。

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スマートマテリアル研究センター