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2018.1.10

ナノハイブリッド技術の応用による簡便な高屈折率膜の形成技術を開発

 株式会社KRI(本社:京都市下京区、社長:田畑健)は、ナノレベルで有機成分と高屈折率無機成分を反応させることにより、熱処理のプロセスを経ることなくTi系として屈折率1.92、Zr系として1.76を超える高屈折率のナノハイブリッド膜を形成する技術を開発しました。

概要

 KRIは、これまでに培った錯体1)形成技術・ナノハイブリッド技術2)を応用して、ナノレベルで有機成分と高屈折率無機成分を反応させることにより、ポリマー母材中に粒径1nm程度の高屈折率組成物を均質に分散させることが可能な塗布液を開発しました。この塗布液を基材に塗布・乾燥後、紫外光を照射することにより、高屈折率組成物が均質に分散した高屈折率ナノハイブリッド膜を安価で容易に形成することが可能になります。

背景

高屈折率組成物が均質に分散することにより、光の散乱(レイリー散乱3))を極限まで抑えることが出来るため、高屈折率無機成分として、ZrやTiを使った場合、屈折率(nD)がそれぞれ、1.769(推定ZrO2換算量:74重量%)、1.922(推定TiO2換算量:64重量%)の透明性に優れた塗膜を得ることが出来ます。

本技術の特徴

 本開発により、熱処理のプロセスを経ることなく、低温で透明性に優れた高屈折率ナノハイブリッド膜が出来ることから、ガラス等の無機素材だけでなくポリマー材料への膜形成が可能となります。また、本技術は、各種ディスプレイの視認性を向上するための反射防止膜(AR膜)、太陽電池の光の取込み効率を向上させるためのAR膜、LEDの光の利用効率を向上するためのAR膜等を構成する高屈折率膜を形成する際に利用出来ます。

応用分野

 KRIでは、本開発を基に、お客様が求められる各種光学デバイスの高機能化に応じた高屈折材料の設計・開発、適用技術の開発や、低屈折率膜との組合せによる各種光学デバイスに対応した反射防止膜の設計・開発を行ってまいります。

用語解説

1) 錯体
広義には、配位結合や水素結合によって形成された分子の総称。 狭義には、金属と非金属の原子が結合した構造を持つ化合物(金属錯体)。 この場合非金属原子は有機配位子であり、今回は狭義の意味で使用。
2) ナノハイブリッド技術
新たな機能を発現するために、有機物と無機物を数から数10nmのサイズで均質性又は不均質性を制御し複合化する技術。
3) レイリー散乱
光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱。太陽光が大気で散乱されることによって、空が青く見えることが典型的な現象。

この内容に関するお問い合わせ

スマートマテリアル研究センター(ICT/次世代通信)