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2014.1.28

ナノテクを利用した環境にやさしく汚れにくいディスプレイ材料

―フッ素フリー撥水撥油材料のデバイス応用―

 株式会社KRI(本社:京都市下京区、社長:住友 宏)は、環境にやさしい親水疎水ナノ構造制御によるフッ素成分を使用しない防汚膜として利用できる撥水撥油材料を開発しました。

背景

 近年、スマートフォンやタッチパネルの急速な普及により、優れた防汚(4防湿(5特性がディスプレイに要求されています。ディスプレイを汚れにくくするには表面に撥水性(1撥油性(2が必要で、フッ素成分の適用が最も有効です。しかし、フッ素成分を含む化合物は人体・環境への影響が指摘されており、年々規制も厳しくなっています。また、異常加熱の際、腐食性、毒性の強いガスを発生するため、安全かつ環境にやさしいフッ素成分を使用しない防汚性能の優れた撥水撥油材料の開発が求められています。
 そこで、フッ素成分の代わりに長鎖アルキル基を用いた撥水撥油処理材の形成も試みられていますが、フッ素成分を含む材料に比べ特性が劣るだけでなく、熱的安定性、機械的特性が低くなる傾向にあります。

本技術の特徴

 KRIでは、環境汚染の一因となるフッ素成分を使用せずに安全で汚れ防止に優れた効果のある撥水性・撥油性を有する材料を開発いたしました。
一般的な樹脂とシリカ系材料を組合せることで、非常に微細で特殊な構造(相分離構造(3が形成され、汚れ防止に効果のある撥水・撥油性能を発現させることがわかりました。特に油滴(n-ヘキサデカン)の転がり始める角度(転落角(6が3°と非常に小さく、汚れ防止に期待が持てます。
 既存のフッ素や長鎖アルキルを用いた防汚膜の最大の短所は、相手側に非常に付きにくくはがれやすいということが挙げられますが、KRI開発品は、有機物と無機物の両方の特性を併せもつシリカ系材料(ポリシルセスキオキサン(PSQ)材料(図1))を用いることで、色々な材料へ接着することができるようになりました。このことにより既存品のようにプライマーを使用することなくワンコートで塗布することが可能でコストダウンとなります。
 また、高温での使用も可能で、傷のつきにくい丈夫な透明膜を作製することができました。
 この撥水撥油メカニズムを用いた膜は、内部まで相分離構造が存在するため摩耗したとしても初期特性が維持でき、既存の単層薄膜に比べ耐久性が保持できます。

応用分野

 フッ素成分を使用しない撥水撥油材料は、液晶や有機ELディスプレイなどだけでなく、透明性、防汚性、撥水撥油性、表面滑り性、耐擦傷性及び耐熱性等の特性を有することから、光ファイバーの鞘材、レンズ・フィルター用保護膜、太陽電池等の光学材料部材の表面処理材として展開が挙げられます。また、耐熱性と耐摩耗性に優れることより、半導体用封止剤、半導体用絶縁膜等の半導体用材料、ガラストップコンロ、摺動表面処理膜等の各用途に適用することも考えられます。

今後の展開

 KRIでは、受託研究により、お客様が求められる機能付与(耐熱性、機械特性、耐候性等)や撥水撥油特性を付与したい基材に応じた機能性表面処理膜材料の設計・開発を行っていきます。

用語解説

1) 撥水性
固体表面が水をはじく性質のこと。
2) 撥油性
固体表面が油をはじく性質のこと。
3) 相分離構造
構成要素分子が非相溶の場合、互いに混じり合わず独立した状態で分散し硬化した構造のこと。
4) 防汚性
汚れが付きにくい性質のこと。あるいは、汚れが落ちやすい性質のこと。
5) 防湿性
水蒸気を通さない性質のこと。
6) 転落角
液体を水平な固体表面上に静置した後 傾斜させていくと、液滴は変形しあるところで滑り出す。このときの傾斜角度を転落角という。

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スマートマテリアル研究センター(ICT/次世代通信)