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2012.10.19

高い水蒸気バリア性有するクレイコンポジットコーティング剤を開発

―有機溶媒への高い分散性を有する低吸湿性クレイの開発に成功―

 株式会社KRI(本社:京都市下京区、社長:成宮 明)は、従来のクレイコーティング材料に対し、透湿度が1/4にまで低減したクレイコンポジットコーティング剤を開発しました。本コーティング剤は、多種多様な材料に対する密着性はもちろん紫外線吸収能等の機能付与も可能であり、高湿下においてもガスバリア性の低下は無いため、食品、医療用分野等への利用が期待されます。

背景

 クレイ1)は、厚みが1nmの層状の化合物であり、その層間にナトリウムイオン等の陽イオンを保持する結果、水和2)、膨潤するという特徴を有しています。また、クレイそのものはガスを透過しないため、クレイを利用したポリマーコンポジット膜を形成した際、クレイが面内方向に配列することで高いガスバリア性を発現することが知られています。このような性質から、クレイは古くからガスバリア素材として注目され、数多くの研究開発が行われてきておりますが、クレイの水和、膨潤という特性がゆえに、高湿下でのガスバリア性の低下や、水蒸気バリア性が低いことが問題となっていました。

本技術の特徴

 KRIでは、カチオン3)性基を末端に有するポリマー(以下カチオン性ポリマー)を、クレイの層間イオンとイオン交換4)した、ポリマー/クレイコンポジット素材(以下修飾クレイ)の吸湿性低減技術を確立することで、従来のクレイ系ガスバリアコーティング剤と比較して高い水蒸気バリア性を有するクレイ系コンポジットコーティング剤の開発に成功しました。また、そのために本クレイ系コンポジットコーティング剤のコーティングにおいては、積層コーティングやラミネート等を施すことなく、透湿度が2.6g/m2・dayと高い水蒸気バリア性を達成することに成功しています。

本技術は、以前より検討を行ってきたカチオン性ポリマーを利用した修飾クレイの吸湿性を低減することを技術的な特徴としています。具体的には、層間にリチウムイオンを有するクレイをベースに調製した修飾クレイを、不活性雰囲気中、高圧下で熱処理を行うことにより、高い分散性を有する、低吸湿性の修飾クレイを抑制できることを見出したものです。また、カチオン性ポリマーについては、様々な構造設計が可能であるため、様々な基材への高い密着性はもちろん、熱架橋、光架橋といった硬化性や紫外線吸収能等の機能性の付与も可能になります。

今後の展開

 今後は、プロセス的にコストが安く、形状制限の少ないウェットコーティング剤として、食品や医薬品向け包装材料等を手掛ける企業に、また高い分散性、低吸湿性を活かし、電子部品等に利用されるエポキシ系封止材向け素材として、様々な企業に技術紹介を行い、受託研究を進めて行く予定です。

用語解説

1) クレイ
アルミニウム、マグネシウム等の金属元素とケイ酸(ケイ素、酸素、水素からなる化合物)とが連結してできたシート状の化合物である。シートの厚みが約1nmと非常に薄く、シート間には水や金属イオンが存在している。
2) 水和
有機化合物、イオン性化合物等の化学種へ、電気的な相互作用や水素結合の形成を駆動力とし、水分子が付加する現象。
3) カチオン
プラスの電荷をもったイオンの事(陽イオン)。
v4) イオン交換
接触している溶液に含まれるイオンを取り込み、その代替として自ら保有する別のイオン種を放出することにより、イオン種の交換を行う現象。

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スマートマテリアル研究センター(エコフレンドリー/QOL)