株式会社KRI(社長:成宮明)は、これまでに、微生物の積極的な活用に係る研究に取り組んで参りましたが、今回、新たに、従来法に比較して最大1000倍のスピードで、微生物を個別かつ高速に分離評価するシステム技術を開発しました。これにより、有用な微生物を高速でスクリーニングすることが可能となり、微生物機能の高度活用が容易に図れることが期待されます。
背景
微生物の機能を利用した産業として、微生物由来製品の市場規模は、医薬品(4千億円)や化学(7千億円)や食品・サプリメント(4兆8千億円)など計6兆円規模と試算されており、今後は、より高機能・高付加価値の製品開発が望まれています。例えば、紙おむつなどの原料であるアクリルアミドは、現在、世界生産規模のほぼ半分(約30万トン)が微生物を利用して製造されています。しかし、産業に有用な微生物を探索することは、自然界に棲息する多種多様な微生物群(土壌1g中に数千万個の微生物が含まれる)から選別することが必要であり、開発の現実は、長年の経験に頼る手操作の実験作業が求められました(例えば、コレステロール低下剤(コンパクチン)のシーズ微生物を探索するためには、2年以上4名の人員で、6000の微生物を探索して1個の有望微生物が選択された)。
一方、公的機関により微生物バンクが整備され、世界最高水準の約8万のコレクションが揃えられていますが、国内全企業の利用数は、年間4500程度(平成22年度)の状況であり、微生物を利用した産業でのイノベーションを推進するためには、多数の微生物を対象として有用微生物を探索することが必須であり、その探索を短時間に効率よく行うことを可能とする技術が望まれていました。
KRIでは、微生物操作の効率化・スピードアップを実現できる革新技術として、MEMSを利用した微生物(生物)ハンドリングに早い段階から着目して、そのための基礎技術研究に取り組んで参りました。複数の異なる技術領域の研究者により構成されるKRIならではの取り組みと言えます。
今回の成果
KRIでは、MEMS技術1)を応用した個別微生物のハンドリング技術(特許4451116および特許4822689)を駆使し、以下の特長を有する高速分離システム技術を開発しました。
本システムの適用効果
土壌から金酸(金イオン)を還元する能力のある微生物を分離しました。携帯電話などからの金回収(都市鉱山)など資源回収への利用可能性が考えられます。
土壌から金酸(金イオン)を還元する能力のある微生物を分離しました。携帯電話などからの金回収(都市鉱山)など資源回収への利用可能性が考えられます。
今後の進め方
KRIは、当該システム技術を駆使し積極的な受託研究を通じて、様々な微生物機能利用が期待される下記のターゲット領域での日本の競争力強化・向上に貢献して参ります。
● 創薬(生理活性物質・医薬品シーズ)
● サプリメント (抗メタボ成分3))
● 化学原料(バイオプラスチック原料、光学活性物質)
● バイオ燃料(バイオエタノール、バイオガス、油分合成藻類)
● 土壌汚染浄化処理(バイオレメディエーション)
● 高度排水処理
● 鉱物資源開発(バイオリーチング4))、脱硫、都市鉱山)
● 微生物ソーターシステム装置の開発