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2011.10.17

伸縮可能なフレキシブル導電膜へ

―長さ1μm以上、幅150nm以下の酸化グラフェンナノリボンを開発―

 株式会社KRI(本社:京都市下京区、社長:成宮 明)は、フレキシブル電極などに利用できる酸化グラフェンナノリボンを収率よく得る方法を開発しました。

背景

 タッチパネル、薄型ディスプレイ、太陽電池、電子ペーパー等に用いられている透明電極材は、現在ITOが主流です。しかしながら、今後予想される薄型ディスプレイの普及や大面積化によりインジウムの枯渇が懸念され、代替材料の開発が進んでいます。代替材料として、ZnOなどが検討されています。また、薄型ディスプレイの別の流れとしてフレキシブルさが求められており、単層カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、金属ナノワイヤーなどが導電材として検討されています。
 去年のノーベル賞受賞で一般に知られるようになったグラフェン1)は、軽く薄いにもかかわらず、高い機械的強度、高い電子の移動度、高熱伝導性を有するため、電極材、半導体電子回路、高感度センサなどへの応用が期待され、活発な研究開発が始まっています。特に透明性を生かしてフレキシブルなディスプレイや電子ペーパー用の電極材として期待されています。
 このグラフェンの作製方法は、大別して、

1.金属箔上にCVDでグラフェンシート作製する方法
2.1枚のグラフェンシートが積層してできているグラファイトを酸化し、生成した酸化グラフェンシート(水溶性)を超音波処理等で1枚単位で剥離し、これを還元してグラフェンシートに戻す方法

の2つがあります。
 後者の方法では、酸化グラフェンシート分散液を基板上に塗布して還元するという簡便なウエットプロセスで電極材を作製できるため、コスト的に有利です。ただし、通常のグラファイトを用いる場合、得られる酸化グラフェンの形状およびサイズが不揃いであるため、電極材としたときに折り曲げ等で断線する可能性やグラフェンシート間の接触抵抗の発生が懸念されます。そのため、不定形であればできるだけ面積の大きな酸化グラフェンシート、あるいは形状の揃った酸化グラフェンシートの作製が求められています。また、酸化グラフェンシートの収率が10%程度と低いため、その向上が求められています。

本技術の特徴

 KRIでは、高度な高分子結晶作製技術を用いて結晶性ポリイミドナノリボンを作製する技術を保有しています。そこで、このポリイミドナノリボンを形状を保ったままグラファイトナノリボンに転換することが出来れば、これから形状の揃った酸化グラフェンナノリボンを作製できるのではないかと考えて鋭意研究を行い、新たな剥離方法を開発して酸化グラフェンナノリボンを作製することに成功しました。本技術の特徴は、次の通りです。

(1)長さ1μm以上、幅150nm以下で幅の揃った単層酸化グラフェンナノリボンを50%程度の収率で得ることができる。従来の方法では、長径5μmといった酸化グラフェンシートを作製することはできますが、形状を揃えることはできなかった。
(2)従来の酸化グラフェンと同様、ヒドラジン−熱還元を行うことにより、形状を保ったままグラフェンナノリボンを得ることが可能。
(3)上記リボン状酸化グラフェンは0.5%程度の水分散液とすることが可能。

 本技術を応用すると、長くて幅の揃ったグラフェンナノリボンを得ることができます。このようなグラフェンナノリボンからなる導電材は網目状の導電パスを形成するため、不定形でかつサイズの揃っていないグラフェンシートを用いた場合に比べて、透明性が向上し伸縮にも強い導電膜となることが期待されます。
 今後、リボン幅を小さくすること、低コスト化、還元方法の最適化などについて受託研究を行っていく予定です。

用語解説

1)グラフェン
グラフェンは、炭素原子が蜂の巣状に六角形の2次元ネットワークを形成したシート状の物質で、これが積み重なったものがグラファイトです。

この内容に関するお問い合わせ

スマートマテリアル研究センター(ICT/次世代通信)