株式会社KRI(社長:成宮明)は、微生物の作用による生成物を対象として、活性酸素除去効果や整腸作用効果などの健康効果成分の探索検討を進めてまいりましたが、今回、新たに、メタボリックシンドローム対策に有効な成分が、味噌などの伝統的な発酵食品に含まれていることを発見しました。
背景
いわゆる「メタボ検診」1)が始まって以来、高血糖、脂質異常、高血圧が重複しておきるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は社会的関心が高く(参照1)、内臓脂肪を減らすことを期待した飲料・サプリメントが注目され、大きな市場を形成しています。
また、伝統的な日本食は、ヘルシーな食事として海外からも注目されており、味噌などの伝統的な発酵食品は健康増進に有効だと考えられていますが、健康への効果を引き出す仕組み(メカニズム)はほとんど解明されてきませんでした。
一方、体内の細胞内に存在するPPAR2)が活性化されると、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症の改善効果を引き出し、メタボリックシンドローム対策に有効であることが従来から知られていました。
今回の成果
現行のPPAR活性評価手法はランニングコストが高く、自動化が困難であることから、簡便で低コストの評価方法が求められていました。KRIでは、これまでに、京都大学と共同でPPAR活性を簡易に評価する方法の研究を進め、既知の人工合成化合物を標準物とし、PPAR活性を簡易に評価できることを確認しています。そしてこの簡易な評価法を用いて、味噌など伝統的な発酵食品を評価し、PPAR活性化成分が含まれることを見出しました。すなわち、「伝統的な発酵食品は、健康によい」という、原料等に着目した単なるイメージではなく、効果メカニズムに基づいて抗メタボ効果があることを世界で初めて科学的に実証しました。
また、そのPPARを活性化する成分は、発酵食品中の微生物により造り出されていると考えられ、その微生物を分離し利用することにより、メタボ対策に有効な健康食品・サプリメントを工業的に生産できると期待できます。
今後の進め方
PPAR活性の評価法のさらなる簡便化検討を進めながら、味噌等の伝統的発酵食品中におけるメタボ対策の有効成分の解明検討を進める予定です。併せて、その有効成分を造りだす微生物の探索も進めます。
発酵食品中には多種多様な微生物が存在していますが、その中から、目的の微生物を高速に分離する技術(特許4451116)をKRIは保有しています。今回得られた成果に基づき、有効成分の解明検討と微生物分離の特許技術と組み合わせて、メタボ効果の成分を産生する有効な微生物を、効率よく分離することが可能であると考えております。
KRIは、メタボ対策に有効な健康食品・サプリメントの事業化に関心を有する企業に、技術提案を行い、3年後の実用化に向けて、メタボ対策の有効成分の解明および、生産技術開発を含めた健康食品・サプリメント開発を進める予定です。
今回は、従来より「健康によい」といわれている伝統的な発酵食品に注目しましたが、評価法を改良検討し、評価・適用対象を拡げていくことにより新たな抗メタボリック効果を持つ食品・成分の発見も期待できます。