株式会社KRI(本社:京都市下京区、社長:成宮 明)は、耐候性2)に優れた多機能な親水化剤として、超親水性を有するシリカ系コーティング液を開発しました。
背景
従来より、耐候性の高い無機系の親水化剤としてシリカ系親水化剤、チタニア系親水化剤が開発されています。
そのシリカ系親水化剤の親水性を発現する官能基として、シラノール基が挙げられますが、親水性の点から更なる改良が求められています。一方、チタニア系親水化剤の場合には光が必要であり、光の当たらない暗所では親水性を発揮しません。
また、光を必要としない親水化剤として、親水性アクリルモノマーを架橋剤と反応させた有機系の親水化剤がありますが、耐候性の観点からは無機系には敵いません。
本技術の特徴
KRIでは、分子設計技術、有機合成技術やゾルゲル技術3)等を保有しており、これらの技術をもとに、シリカ系をベースとした従来より親水性の高い親水化剤の開発に取り組み、超親水性を有するコーティング液の開発に成功しました。
本技術の特長は次の通りです。
1.親水性能を発揮する成分として、シラノール基より親水性の高い官能基を導入しコーティング膜の親水性を向上させることに成功し、防曇性を発現できました。本コーティング液は光がなくても親水性能が持続するため、暗所での使用が可能です。
ガラスに対しての接触角 水3.5度
2.基板と汚れのすき間に水が入り込みやすいため、油性マジック、口紅や指紋などの油汚れは水をかけるだけで自然に浮き上がり、除去が容易です。
3.ガラス基板と強固に結合(共有結合)しているため、擦過刺激を与えても親水性能の低下が殆どありません。
4.帯電防止性能を有し、静電気及び埃の付着も防止できます。
5.親水性基の構造を変えることにより、親水性とともに抗菌性も付与可能です。
本技術を用いると、種々の機能性を併せ持つ親水化剤が製造可能となります。さらに、上記3)の性質及び親水化剤の構成成分が殆ど無機材料であることから、親水性機能が持続し、耐久性を持たせることが可能です。
親水化剤の用途例として、次のものが挙げられます。
A.自動車用親水コーティング剤(ウインドー、ミラー及びボディーなど)
B.メガネ及びレンズ用防曇コーティング剤
C.ミラー用防曇コーティング剤
D.タッチパネル、ミラー及び窓ガラスなどの耐指紋コーティング剤
E.厨房、洗面台流し及び便器などの防汚・抗菌コーティング剤
F.住宅外壁、タイル及びトンネル内照明灯カバーなどの防汚コーティング剤
G.太陽光発電パネルの防汚コーティング剤など
今後の展開
今後は、用途に応じた分子設計およびコーティング方法の最適化、ガラス以外の基板(プラスチック基板、プラスチックフィルム及び金属基板など)への適用、コーティング膜の硬化方法の検討やコーティング剤の工業的製造方法の検討などに取り組み、塗料・コーティング剤メーカーなどのご要望に応じた実用化開発研究を進めていく予定です。