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2009.2.3

セラミックス材料の機能向上に新手法

―超構造の導入で、高性能誘電体・圧電体・蛍光体への応用可能―

 株式会社KRI(社長:成宮 明)は、コンデンサ、センサやLEDに用いられるセラミックス材料に、超構造1と呼ばれるナノスケールの歪構造を導入することで、蛍光性等の機能を向上できることを確認しました。
 今回開発した手法により作製した粉体状の蛍光体の発光強度が、超構造を導入しない場合の2.5倍となることを確認しました。

背景

 セラミックス材料に超構造を導入して機能向上を図ることは以前から注目されていました。これは、超構造に由来する歪エネルギーにより、歪のない場合と比べて、電気特性や磁気特性が向上する効果が期待されるからです。
 しかしながら、超構造導入によって機能向上する報告例はこれまでいくつかありましたが、それらは薄膜作製プロセスであるCVD法(化学的蒸着法)2に限定されており、応用範囲の広いバルク材料や粉末材料への検討はほとんど進められていませんでした。バルクや粉末形態の材料を作るプロセスでは、目的どおりの超構造が導入できるほどの技術はなかったためです。

技術の特徴

 KRIでは、一般のバルク材料や粉末材料への超構造導入を目指し、独自のナノ構造制御技術を検討してきました。今回、異種元素を添加する条件を最適化することで、薄膜以外の材料状態での超構造導入を可能とする粉末冶金的手法を開発しました。

 この手法により、光学用途で用いられるニオブ酸リチウムをベースに、超構造を有する希土類−ニオブ酸リチウム系蛍光体を粉末で作製することに世界で初めて成功しました。

 今回得られた成果と、本技術の特徴は次の通りです。

(1) 作製した材料は、超構造を持たない同組成の粉末に比べて2.5倍の発光強度を示す。
(2) 粉末冶金的手法を用いており、作製方法が簡便であり、特殊装置を必要としない。

今後の展開

 KRIでは、セラミックス材料に超構造を導入することが、機能向上のための手法の一つになると考え、以下の機能性セラミックス材料の研究開発を目的としたマルチクライアントプロジェクトを企画し、参加クライアント企業の募集を行う予定です。

(1) 高性能誘電体 ・・・ 小型大容量コンデンサ(携帯機器の軽量・コンパクト化)
(2) 高性能圧電体 ・・・ 鉛フリー材料による圧電体の実現(環境負荷低減)
(3) 高輝度蛍光体 ・・・ 省エネルギー・環境負荷低減(白色LED向け発光体)

 また、2009年2月18〜20日、東京ビッグサイトで開催される国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2009)に、上述のセラミックス材料を出品予定です。

用語解説

1)超構造
>ナノスケールの周期的な欠陥(歪み)が見られることを特徴とする構造のこと。詳細には、ある特定方向に単位格子が数個積層してひとつの大きな構造を形成する。この大きな構造が周期的に配列してできる構造を超構造(又は超格子構造)という。欠陥部位には、歪みエネルギーが存在する。
2)CVD法(化学的蒸着法)
薄膜作製の最も代表的な方法。膜の構成成分を一旦気化し易い化合物に変えた後、キャリアガスによって反応管に導いて基板上で分解または反応により析出させる方法。

この内容に関するお問い合わせ

スマートマテリアル研究センター(エネルギー)