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2009.2.9

熱可塑性ナノコンポジット材料の開発

溶融混練法による無機超微粒子の均一分散―

 株式会社KRI(社長:成宮 明)は、ポリマーにナノメートルサイズの超微粒子を均一分散して得られる、高機能な複合材料"ナノコンポジット"の開発に取り組んできました。
 今回、工業化を見据えた分散手法として溶融混練法に注目し、熱可塑性ポリマー2)に超微粒子を均一分散させたナノコンポジットを簡便に作成することに目処がたちました。

背景

 ポリマーは、各種の超微粒子と混合しナノコンポジットとして利用することで、様々な物性の向上が期待できます。
 その際、優れた物性を得るためには、超微粒子をポリマー中に均一に分散させることが必要です。 しかし、超微粒子はエネルギー的に不安定で凝集しやすく、超微粒子を均一に分散させたナノコンポジットを作ることは困難です。
 例えば、透明なポリマーであっても、超微粒子の凝集が起こるとナノコンポジットは濁ってしまいます。 現状では、十分な均一分散が可能な超微粒子はシリカ系や膨潤性クレイ系のみに限定されており、ナノコンポジットを形作る技術は開発途上です。

技術の概要

 KRIでは、超微粒子への独自の表面処理方法を用いて、熱可塑性ポリマーのナノコンポジット化について検討した結果、ポリマー産業分野で汎用性の高い混合法である溶融混練法によって、超微粒子が均一分散されたナノコンポジットを形成させることができるようになりました。
 得られたナノコンポジットの特長は次の通りです。

1.透明性の保持
直径が10nm以下のサイズの超微粒子を均一に分散させることで、熱可塑性透明ポリマーの透明性を保持したナノコンポジットが得られます。
2.新たな機能性の付与が可能
超微粒子の最適な設計、合成およびその均一分散により、光学特性、熱的特性、発光性、磁性などの新たな機能を得ることができます。
3.射出成形、押出成形に対応
熱可塑性ポリマー本来の成形性(量産性)を損なうことなく、バルク体3)が得られ、応用・実用化に直結します。

応用分野

本件の熱可塑性ナノコンポジット材料の応用分野と用途として、次のものが挙げられます。

1.光学特性制御(屈折率制御、アッベ数制御)
→カメラ用レンズ、CD・DVD用ピックアップレンズ、プリズム、導光板
2.耐熱性改善(熱膨張係数制御)
→精密成形品の寸法安定性
3.放熱性改善(熱伝導率制御)
→電子機器の集積性、安定動作に貢献
4.発光性付与(RGB発光)
→カラー発色可能な発光樹脂
5.磁性付与
→透明な磁性樹脂

今後の展開

 今後は、川上から川下までの多様なクライアント様と共同でニーズに応じた材料設計・試作・評価を通じて、実用化を念頭においた開発を行っていきます。
以上の内容を含む本件の詳細は、国際ナノテクノロジー総合展・技術会議"nano tech 2009"(2009年2月18日〜20日開催)で発表予定です。

<特許第4148348、特願2008-028486>

用語解説

1)溶融混練法
ポリマーを加熱して溶融させると同時に、せん断力(機械力)を与え、微粒子を材料内部に分散させる方法。ポリマーと微粒子等を複合化する際の、代表的な方法。
2)熱可塑性ポリマー
加熱すると軟化し、冷却すると固まるポリマーの総称。 加熱後に型に流し込み冷却することで成形できるため扱いやすく、大量生産に向く。
3)バルク体
フィルムやシートなどの"薄膜"状の成形品とは異なり、塊状(バルク)の成形品を指す。

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スマートマテリアル研究センター(モビリティ/センシング)