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2007.5.22

液晶性高分子を用いた超高感度フォトレジスト*1を開発

― 解像度、ドライエッチング耐性をおとさず 従来比18倍の高感度を達成 ―

株式会社KRI(本社:京都市下京区、社長:中芝明雄)は、液晶性高分子からなる新規なフォトレジストを開発し、解像度やドライエッチング耐性を損なうことなく従来比18倍の高感度を得ることに成功しました。
当社は今後、本基本技術を用いて、次世代半導体リソグラフィーやストレージメディア2)分野を中心に、材料メーカーやデバイスメーカー等と共に実用化開発を行っていきます。

背景

フォトレジストは、主に半導体リソグラフィー等に用いられている感光性材料です。ネットワーク技術やソフトウェア技術の進展に伴う高集積化・高速化・低消費電力化を背景に、近年急速に高解像度化(微細化)が進んでいる半導体リソグラフィーでは、露光波長を短くすることで解像度を上げてきましたが、露光波長の短波長化は照度を低下させ、その結果、照射光に反応する時間がかかる(感度が低くなる)という課題がありました。1982年にはIBM社が発表した化学増幅反応を用いたフォトレジスト3)によって飛躍的に感度が改善され、現在では化学増幅フォトレジストが半導体生産の主流となっています。
しかしながら、次世代半導体製造におけるArF露光では、光がレンズ材や酸素に吸収されることによる照度低下、次々世代であるEUV4)およびEB5)では光源及び電子線の強度の不足等の課題があり、化学増幅フォトレジストの高感度化への要求は強くなっています。
また、化学増幅フォトレジストを使用した微細加工は半導体製造のみならず、フォトマスクやナノインプリント用金型、光ディスク、微小光学素子など広範な用途展開が期待されていますが、半導体製造に比べ露光面積が非常に大きいことから、これらの分野においても高感度化が切望されています。

今回の成果と特徴

そこで当社は、当社のコア技術である感光性材料の合成技術・配合技術・評価技術を融合することにより、新規フォトレジストを合成し、フォトレジストの主要特性である「解像度」「ドライエッチング耐性」を損なうことなく、「感度」を著しく改善することに成功しました。
この新規フォトレジスト材料は、ビフェニル基を有する側鎖型液晶高分子を骨格とし、低活性の保護基をもつものです。液晶性高分子であることから、従来品にはない、触媒である酸の異方的な拡散が起こり、高感度になったものと考えられます。
また、ビフェニル基を有することでドライエッチング耐性も維持され、保護基やその比率を最適化することにより、高い溶解コントラストが得られ、解像度の維持に寄与しました。

新規フォトレジストの従来品との特性比較
  • 1)感度           18倍(膜抜け感度:0.4mJ/cm2
  • 2)解像度① 線幅      同等
         ② レジスト形状より矩形である
  • 3)ドライエッチング耐性   同等

この材料を用いることで、次々世代の半導体製造として脚光を浴びているEUVおよびEB露光によるリソグラフィー技術に応用することにおいても、また、ホログラムや微小光学素子などの表示およびマイクロオプティクス技術分野でも、高性能かつ低コストの製造を可能にすることが期待できます。
当社は、今後、受託研究を通じて、これまでもレジスト関連材料研究を中心にかかわってきた次世代リソグラフィー技術およびストレージメディア分野への応用展開を図っていく予定です。

用語解説

1)フォトレジスト
フォトリソグラフィーにおいて用いる、薄膜にして光を照射すると耐薬品の大きな硬質膜に変化する感光性材料。ポリケイ皮酸ビニルをはじめとする感光性樹脂などが使われる。プリント配線基板、IC、LSIの製造、製版等に利用される。 通常、基板にレジスト塗布→プリベーク→露光→露光後ベーク→現像→リンスのプロセスを経てパターンとなる。 パターン露光された部分が現像でなくなるポジレジストと露光部分が残るネガレジストがある。 半導体製造リソグラフィーでは、露光波長を436nm(g線) →365nm(i線) → 248nm(KrF) → 193nm(ArF)と短波長化してきた。
2)ストレージメディア
情報を永続的に保存しておくための外部記憶装置。ハードディスク等の磁気ディスク、CD・DVD等の光ディスクがある。近年では大容量の情報保存の必要性から、コンピューター関係だけでなく、通信機器や家庭電化製品などにも搭載されている。 ストレージとは、「保管・倉庫」という意味。
3)化学増幅反応を用いたフォトレジスト
露光によって活性種(酸)を発生させ、これを触媒としてレジスト膜中で連鎖反応(脱保護反応)を起こさせる反応を用いたもので、1982年にIBM社が発表した。
4)EUV
Extreme Ultra Violetの略称。波長は13.5nmである。半導体デバイス製造においては次々世代で必要となる線幅を、この波長を使用して微細加工する計画がある。
5)EB
Electron Beam(電子線)の略称。電子線描画装置が現在市販されており、高解像度が必要で、且つ、多品種・少量生産であるシステムLSI製造やフォトマスク製造に使用されている。しかしながら、感度が非常に遅く、大量生産の半導体デバイスには不向きである。

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