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2005.11.25

成形加工性に優れた、高耐熱・高透明ポリ乳酸樹脂の開発に成功しました

―延伸シート、発泡体などの成形が可能になり、飛躍的な需要増に貢献―

  株式会社KRI(社長:中芝明雄)は、多様な成形法に対応が可能な、高耐熱・高透明ポリ乳酸樹脂の開発に成功しました。新規な設備投資の必要もなく、これまでポリ乳酸樹脂が苦手としていた延伸シートや発泡体をはじめとする多様な成形が可能になることから、ポリ乳酸の今後の需要を飛躍的に増大させるものと考えます。
  当社は今後、この新規なポリ乳酸樹脂の開発技術を用いて、実用化を希望する各種メーカー等と共に、各用途に応じた最適化を中心とする研究開発に取り組んでいく予定です。

背景

  ポリ乳酸樹脂は、代表的な生分解性樹脂です。再生可能な植物資源を原料として石油消費の抑制に貢献すると共に、燃焼時に有害物質を発生せずカーボンニュートラル1)であることから、将来にわたっての資源・エネルギーおよび環境問題の解決に大きな役割を果たすことが期待されています。   しかしながら、従来のポリ乳酸樹脂は物性面(耐熱性)、応用面(成形加工性・透明性)で産業ニーズを満たしていないことから、実需は期待に反して低くとどまっています。国内の樹脂メーカーや自動車メーカー、家電メーカーなどでは本格的な商品化に向けて樹脂の改良研究を精力的に進めていますが、耐熱性や成形加工性などの課題により用途が大きく制限されるという段階から未だ進んでおりません。

今回の成果と特徴

  当社は、「特殊な表面処理」を施したナノフィラー(機能性ナノフィラー)を用いて、通常の溶融混練だけで、機能性ナノフィラーをポリ乳酸樹脂中に均一に分散させることに成功しました。
  本技術では、ナノコンポジット化された樹脂中において機能性ナノフィラーとポリ乳酸樹脂は強力な相互作用を示し、また、機能性ナノフィラーの選択や添加量で樹脂の溶融粘度を制御することができるため、従来のポリ乳酸樹脂にはない次のような特性を得ることが出来ました。

1.  様々な成形法に対応できる (高成形性)
2.  130℃の高耐熱性を有する (高耐熱性)
3.  樹脂の透明性を損なわない (高透明性)

  この結果、上記の特性を犠牲にすることなく、共重合2)ポリマーブレンド3)などで変性しなくても成形法と要求物性に応じたグレードを製造することができ(汎用グレード化)、従来困難であった延伸シートやフィルム、管状体や繊維、発泡体などの成形も可能となります。また、樹脂の結晶化速度(固化)が速くなるので、成形サイクルが早くなりコスト削減にも寄与します。
  2020年にはおよそ2千万トンの生産が見込まれるポリ乳酸樹脂ですが、本技術の導入により本格的な実用化による需要の増大を加速するものと見ています。

用語解説

1) カーボンニュートラル
植物については、化石燃料と同様に燃焼によって二酸化炭素を発生することがあるが、成長過程で光合成により吸収した二酸化炭素を発生しているものであり、ライフサイクルで見ると大気中の二酸化炭素を増加させることにはならないと言われている。このように、二酸化炭素の増減に影響を与えない性質のことをカーボンニュートラルと呼ぶ。(カーボンとは炭素のこと。)
2) 共重合
二種以上のモノマー(単量体)が混合しつつ重合していく反応。ポリマーの耐熱性の低下が見られる。
3) ポリマーブレンド
ポリマーブレンドとは2種以上のポリマーの混合、分散させて機械的・熱的・光学的性質、成形性などの実用的な特徴を持った材料を製造することおよび作られたものをいう。一般的に不透明化したり、耐熱性が低下する。

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