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2004.11.22

カーボンナノチューブを用いて、高周波(ギガヘルツ)帯域でも使用可能な有機絶縁材料を開発

―コンピューター等の大容量CPUにも対応可能―

  大阪ガス株式会社(社長:芝野博文)と株式会社KRI(社長:中芝明雄)は、樹脂用途に使えるカーボンナノチューブ(メタカーボ)1)を用いて、高周波(ギガヘルツ)帯域における有機絶縁体材料の信号伝送損失を低減することを見出しました。本成果をもとに、KRIは材料メーカー等と共同で2007年度の実用化を目指したプロジェクトを立ち上げます。

  現在、有機絶縁材料はパソコンや携帯電話等のLSI等を実装する電子回路基板に多く使用されています。年間出荷量がそれぞれ数億台あるパソコンや携帯電話等をはじめとする電子回路基板の市場は、およそ5000億円以上になります。
  今後、パソコンや携帯電話等の情報通信機器の高速化・大容量化が進むに伴い使用周波数がギガヘルツ帯域になると、信号伝送損失2)が増大することから従来の有機絶縁材料では対応出来ない状況になります。このため、ギガヘルツ帯域でも信号伝送可能な絶縁材料の開発が必要とされています。
  一方、ギガヘルツ帯域で対応可能な絶縁材料として、信号伝送損失が少ないフッ素系樹脂やセラミック系材料等が開発されてはいますが、成形加工性等に難があるためコスト高になっています。

  大阪ガスとKRIでは、大阪ガスが製造する独自のカーボンナノチューブ(メタカーボ)とKRIのナノ分散技術3)を用いて、その用途開発研究を共同で行なってきましたが、有機材料にメタカーボを複合することで、ギガヘルツ帯域における信号伝送損失を従来品に対して1/2程度に低減することに成功しました。
  軽量で成形加工性に優れ安価な有機材料の利点を活かすことで、材料コスト増を抑え、かつ性能の向上を図ることが可能となります。

【主な特徴】

1.  性能の向上:信号伝送損失を1/2程度抑え、ギガヘルツ信号の伝送を可能とします。
2.  低コスト化:安価な有機材料の適用により、材料コストを1/10程度に抑えます。
3.  省エネルギー化:エネルギーのロスを抑えます。
4.  母材(有機材料)が本来持つ他の性能へ影響を殆ど及ぼしません。

  KRIは、本成果をもとに材料メーカー等のクライアントを募集し、12月にマルチクライアントプロジェクト4)を立ち上げます。本プロジェクトでは、クライアント製品材料別にナノプロセス処理の最適化、材料評価等を行なう予定です。
  なお、大阪ガスは、メタカーボが樹脂等との親和性が高いという特性を利用し、電子放出用途だけでなく、この有機絶縁材料のような樹脂複合分野への展開を図って行きます。

用語解説

1)メタカーボ
大阪ガスが製造するカーボンナノチューブの商標。直径10〜数10ナノメートル、長さ数ミクロン以上のチューブ状多層炭素壁中にナノサイズの鉄を内包する。高い電子放出性、高耐熱性、高電気伝導性、高親和性が特徴。
2)信号伝送損失
電子回路基板上の絶縁材料の分子が高周波による電場に追随できずに起きるズレのような現象から発生する熱やノイズによりエネルギーを損失し、結果として伝送信号を損失すること。
3)ナノ分散技術
ナノサイズの粒子を溶液や樹脂等に凝集させないで均一分散させる技術。化学表面処理や機械分散処理等を行い、高度な分散を可能としたことがKRIの特徴。
4)マルチクライアントプロジェクト
材料メーカー、加工メーカー、半導体メーカー等多数のクライアントが参画し、シーズ技術の応用実用化を目的とした研究開発をKRIが主導で行う委託研究プロジェクト。

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