株式会社KRI(京都市下京区、社長:中芝明雄)は、透明性を維持しながら耐熱性にも優れたポリ乳酸樹脂の開発に成功しました。
ポリ乳酸樹脂は、とうもろこしやジャガイモ等のでんぷんから得られるポリ乳酸を原料とした生分解性樹脂1)の一種です。再生可能な植物由来の原料を使った材料であり、石油消費の抑制に貢献するとともに、燃焼時のCO2放出量が抑制でき、かつ燃焼時に有害物質を発生しないことから大きな注目を集めています。スーパーの買い物袋やビニールハウス用のフィルム等が実用化されている以外には、最近では、自動車メーカーや家電メーカーがポリ乳酸樹脂を使用した商品を発表するなど開発研究が進められており、2020年の需要2)はおよそ3000万トンという予測もあります。
しかしながら、従来のポリ乳酸樹脂には「耐熱性が低い」という欠点があり、実用化の範囲は限定されていました。
当社は、ナノコンポジット化技術3)等を利用することで新に結晶化の制御技術4)を見出し、「実用性の高いポリ乳酸樹脂の改質に関する開発研究」を行なってきましたが、今回、汎用樹脂並みの110℃の耐熱性を確保すると共に、透明性をも両立させることに成功しました。
本開発品であるポリ乳酸樹脂の特徴は次のとおりです。
1. 低い耐熱性(従来品で約60℃)を改善し、110℃の高耐熱性を有する、
2. 従来の結晶化に伴う失透を防ぐことで、透明性を有する、
3. 従来の脆さがなく、強度にも優れる。
このように、当社が開発したポリ乳酸樹脂は高耐熱性と透明性を有することから、モバイル電子機器やPC等のディスプレイ表示パネルやカバーシート、化粧品や飲料用の各種透明容器等、従来のポリ乳酸樹脂では使用できなかった用途においても幅広い使用が可能となります。
当社は、今後、さらに130℃以上の高耐熱性の獲得を目指した研究を行なうと共に、実用化を見込む各種メーカー等と共に、各用途に応じた最適化を中心とする開発研究に取り組んでいく予定です。
用語解説
- 1)生分解性樹脂
- 生分解性樹脂は、使用後に土などの生態系に戻すことで、微生物の働きで完全に分解されるように開発された樹脂(プラスチック)。農業用やゴミ袋をはじめ、様々な分野への応用が試みられています。 大別すると、100%天然素材のもの、石油由来の合成素材や複合体等がありますが、大気中の二酸化炭素量に影響を与えない(カーボンニュートラル)点から、ポリ乳酸に代表される植物由来のものに高い期待が集まっています。
- 2)2020年の需要
- 生分解性プラスチック協会によると、国内の生分解性プラスチックの生産量は2002年度では1万トン弱ですが、2006年度には約150万トンになると予測されています。一方、トヨタ自動車殿は、2020年には生分解性樹脂の市場が3000万トンに拡大し、その内2000万トンを自社生産することを目標にする、と発表されています。
- 3)ナノコンポジット化技術
- ある母材にナノフィラーを添加し複合化する技術。 (ナノフィラー・・・ナノ粒子、ナノチューブ、ナノホーン等の形状がある)
- 4)結晶化の制御技術
- 母材中の一部が結晶化する過程で、構造を制御することで球晶(結晶成長の構造単位)のサイズをコントロールし、かつ配列を制御する技術。