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2003.8.25

環境に配慮した、粒子サイズが10〜30ナノメートルのナノポリマー粒子の作成方法の開発に成功しました

〜水系塗料における耐水性の課題を克服〜

  株式会社KRI(社長:中芝明雄)は、初めて、粒子サイズが10〜30ナノメートルのナノポリマー粒子の作成方法の開発に成功しました。

  ナノポリマー粒子は、ナノテクノロジー分野の中で、DDSとしての医療分野や液晶デバイス等のエレクトロニクス分野への応用が期待されていますが、特に、膜強度の高い高耐久性の水系塗料への応用が急務とされています。
  その背景として、ポリマー粒子を有機溶剤に溶かして使用するものが大半を占める接着剤や塗料分野においてはシックハウス等の環境問題が憂慮され、水系塗料1)の開発が大きな課題になっている点がありますが、従来の水系塗料では、ポリマー粒子を水中に安定的に分散させるために多量に使用する界面活性剤2)が塗膜中に残り、結果として膜強度が弱く、耐水性等の耐久性を悪くする原因になっていました。

  そこで当社は、独自の高分子合成技術とナノ分散技術を駆使することで、界面活性剤量を従来の10分の1以下で、さらに従来の技術ではできなかった小粒径(10〜30ナノメートル)3)のポリマー粒子の合成に成功し、水系塗料の改良を検討し始めました。
  今回当社が開発したナノポリマー粒子の合成方法は、水中へ分散させた油溶性の重合開始剤と水に拡散したモノマーを混合し重合反応4)させる方法です。この方法の特徴は、(1)従来使用していた大型の分散機(攪拌機)が不要なばかりでなく、(2)界面活性剤も微量で済み、(3)さらに粒子サイズを100ナノメートル以下に制御できる、という点です。

  本技術によるナノポリマー粒子を水系塗料に応用すると、従来には無かった有機溶剤系5)塗料並みの耐水性や耐久性の高い塗膜が得られることになり、さらに粒子サイズが小さいため高い膜強度が期待できます。これまで不可能であった屋外用途の水系塗料の開発が可能になります。

  当社は今後、この技術をベースとした開発研究業務のクライアント企業を募集し、水系塗料の開発の他に、インクや接着剤、さらに電子材料や医療材料への応用に向けた受託研究を行う予定です。

用語解説

1)水系塗料
従来の水系塗料の製造方法には、塗料分野に用いられるポリマーが水に溶けないため、ポリマー粒子を水中に分散させ、塗装後の水の蒸発によりポリマー粒子が融着する性質を利用する方法があります。実際にこの方法を用いた水系塗料(エマルジョン塗料)は商品化されていますが、耐水性や耐久性に欠けるため使用できる箇所が限定されており、特に屋外用途で利用出来る水系塗料はありません。
2)界面活性剤
塗料の分野における水系塗料であるエマルジョン塗料の2002年度の生産量は60万トンと報告されていますが、これは界面活性剤をおよそ年間6000トン使用していることになります。
3)小粒径
例えば、従来の水系塗料におけるポリマー粒子のサイズは、従来の製造方法(乳化重合法)において100ナノメートルサイズ以下にすることは不可能であり、ラボスケールにおいて最も粒子サイズを小さく出来る製造方法(ミニエマルジョン重合法)であっても50〜100ナノメートルです。
4)重合反応
簡単な構造をもつ分子化合物が二分子以上結合して分子量の大きな別の化合物(多量体(ポリマー)を生成する反応。この時、もとの分子化合物を単量体(モノマー)という。
5)有機溶剤系
有機溶剤系は、ポリマーが溶剤に溶けているため密着性に優れ、対象物に対する塗膜の強度も高く、また意匠性もコントロールしやすい等、塗料の本来の目的である'物を保護する''外観を美しくする''物に特別な効用を与える'の全ての項目において水系より優れています。

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