日本ペイント株式会社(本社:大阪市、社長:藤嶋輝義)と株式会社関西新技術研究所(本社:京都市、社長:竹内正明)は共同で、薄膜状態で固体電解質的に作用する材料の開発に成功しました。
現在、各種電子機器の軽量・小型・薄型化が進められるなか、二次電池やキャパシタなどの高エネルギー素子を基板上に作り込む可能性への期待が高まっています。このような超小型薄膜電源が実現できれば、従来の携帯機器のさらなる軽量化が可能となります。ところが、現在の二次電池やキャパシタに用いられている電解質が溶液またはゲル状であるために、素子を回路基板上に作り込むことは困難でした。
今回、両社は共同でケイ素化合物の一種であるポリシランを原料としたコーティング液を独自に開発。それをガラス基板上にスピンコーティングして、約0.4μmの薄膜を作り、約300 〜600 ℃で焼成することにより、固体で電解質的作用をするポリシランベース材料焼成膜(薄膜固体電解質)の作成に成功しました。焼成薄膜には微細な孔が多数見られ、これが電解質的作用を行うメカニズムに関与していると考えられますが、詳細については解明中です。
焼成薄膜に金属電極を取り付けた薄膜型キャパシタセルの試作では、3Vで繰り返し充放電することを確認。放電時の重量エネルギー密度(※1)は、2Wh/kg でした。
今回、開発に成功した固体薄膜電解質は、従来の汎用コーティングプロセスで作成できること、また、ケイ素を主成分として焼成しているため、耐熱性にも優れることなどから、回路基板上に超小型の薄膜電源の作成が実現されるものと考えます。
また、将来的には、重量エネルギー密度を高めることで、現在のリチウム電池に代わる二次電池として自動車向けなどへの展開が期待されています。
両社は、薄膜電解質としてのさらなる性能向上をめざすとともに、用途開拓を念頭においた受託研究企業を募り、用途開拓の最適化などの開発プロジェクトを11月からスタートする予定です。
※1 重量エネルギー密度・・・ガラス基板を除く膜重量あたりのエネルギー密度