株式会社関西新技術研究所(KRI:社長 竹内正明)は、有機ELや液晶ディスプレイ(LCD)に使用できる、軽量フレキシブル基板作製の基本技術を開発しました。
現在、有機ELや液晶のディスプレイ用に、様々なフレキシブル基板の開発が進められています。こうしたフレキシブル基板には、有機ELや液晶の劣化の原因となる空気中の酸素や水分を遮断するために必要な高ガスバリア性と、将来的に用途を拡大するために欠かせないフレキシブル性の他に、耐熱性や透明性が求められており、主に有機フィルムのガスバリア性向上と、無機ガラスの柔軟化という2つのアプローチが行われています。しかし、有機フィルムについては、フレキシブル性という点では優れているものの、ガスバリア性の向上が大きな課題になっていることに加えて、耐熱性を付与することが困難であるために、開発はそれほど進展していませんでした。これに対し、無機ガラスについては、フレキシブル性以外の特性は実用化に耐えうるレベルであるため、これにフレキシブル性を付与する試みが行われており、極薄ガラスを有機フィルムでコーティングする方法についての報告もなされています。
今回、当社が開発した技術は、これとは異なる方法で無機ガラスを柔軟化させるものです。従来の有機フィルムの代わりに、当社が開発した有機−無機ハイブリッド材料を50μmの極薄ガラスにコーティングすることでフレキシブル性を付与した結果、無機ガラス基板としては世界最高の限界曲率半径が6mmにまで達することを確認しました。この材料は、当社が研究開発に力を入れている材料で、有機材料の優れた成形加工性と、無機材料の優れた耐久性・耐熱性とをあわせ持つユニークな材料で、これまでに光学レンズ用材料などの用途向けに開発してきたものです。また、有機−無機ハイブリッド材料を採用することで柔軟性、透明性を維持することのできる耐熱温度を、300℃にすることができました。これによって、有機フィルムでは耐えられなかったディスプレイの製造工程における温度制限の問題がなくなると期待されます。
今後は、複数の企業を参加対象に研究プロジェクトを発足し、コーティング材料の最適化や、量産化に向けたコーティングプロセスの検討を実施し、実用化レベルに向けた技術開発を進めていき、2004年度中のメーカーへの技術移管を目指します。