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2002.1.28

微生物を用いた油汚染土壌浄化技術の開発

〜異業種のシナジー効果で開発を加速〜

  株式会社 関西新技術研究所(京都市 社長:竹内正明)は、関東天然瓦斯開発株式会社(東京都中央区 社長:内藤惠夫)、日本工営株式会社(東京都千代田区 社長:和田勝義)、大和製罐株式会社(東京都中央区 社長:山口久一)と共同で、重油等の石油系炭化水素(以下、油分)で汚染された土壌を対象とする、微生物を用いた浄化技術(a)を2002年度を目処に開発します。油分で汚染されたガソリンスタンドや製油所の跡地、化学工場の跡地などの土壌浄化に役立てることが目的です。

  本共同開発において、関西新技術研究所は研究スキルを有するスタッフを提供し、関東天然瓦斯開発(本件担当は同社の地下環境事業部門の子会社である株式会社テクノアース)、および日本工営は土壌・地下水調査の豊富な実績から土壌浄化のノウハウと施工技術を提供します。また、大和製罐は食品の製造・充填過程において蓄積した微生物に関する知識や微生物の解析技術等を提供します。こうした得意分野を有する異業種のシナジー効果により、短期間で完成度の高い技術開発が可能になると考えています。

  本共同開発において注力するのは、油分分解性能に優れた微生物を地中に注入する"バイオオーギュメンテーション法 "(b)の技術開発です。汚染土壌中の微生物を活性化して利用する受動的な従来工法である"バイオスティミュレーション法 "(c)に比べて、本開発工法は、短期間で汚染物質を分解・浄化できる積極的な工法です。

  この工法を実用化するにあたっては、特に

1.  高性能の油分分解微生物の探索
2.  土壌中の微生物モニタリング技術(微生物の解析技術)の確立

が、重要な研究・開発課題と位置付けられます。

  本共同研究では、高性能の油分分解微生物について、さらに複数の大学(d)を加えた共同開発により、国内の土壌から単離した、複数の有望微生物を取得済みであり、本年9月に特許出願を行いました。これらの有望微生物は、好適な培養条件下で、2%の割合で含まれるC-重油を、3日間に60℃以上分解する能力を有しており、同様に軽油については80%以上分解する能力を有しています。
  また、土壌中の微生物モニタリング技術については、注入する微生物および対象土壌中に存在する複数の微生物の遺伝子を抽出し、特殊な電気泳動法によりごく短時間に解析する技術の実用化に目処をつけました。土壌中の複雑な微生物相を把握し、その変化に応じて栄養素や空気の注入のタイミングと量を最適化することが可能となり、処理期間の短縮と処理コストの低減に大きく寄与するものと考えられます。

  さらに、本共同研究の大きな特徴としては、2001年3月に環境省より策定された「地下水汚染に係るバイオレメディエーション環境影響評価指針」の内容に準拠した手順で開発を進めることがあげられます。これにより、注入する微生物や栄養塩による工法の安全性を、人の健康や生態系の側面から評価することが可能となります。ここで、重油等の油分(ベンゼンを除く)は、現在、土壌の汚染に関わる基準として環境省が定める「環境基準」の規制対象外となっています。しかし、近年石油業界の再編や工場跡地の有効利用が進んでおり、土壌中の油分に関する環境省の規制強化を機に、今後、油汚染土壌浄化に係る市場は飛躍的に拡大すると考えられています。

  最終的には、処理期間を従来の半分程度に短縮し、処理費用については、従来汚染土壌1立方メートルあたり1万円程度とされるコストをさらに低減する計画です。2002年度に実施を計画している実証試験の終了後、共同研究に参加している各社は、それぞれ油分で汚染された土壌の修復ビジネスに本格的に参入します。

用語解説

a)浄化技術
油分で汚染された土壌浄化方法としては、次の4つが知られています。
バイオレメディエーション法
焼却法
熱脱着法
抽出・洗浄法
この内、バイオレメディエーション法は、微生物を利用して土壌中の有害物質の浄化を行う技術で、焼却等の物理化学的な方法に比べ、処理に時間を要するものの処理コストが安く、排ガスや廃液などの有害な副産物を生じない点で注目されています。
バイオレメディエーション法は、利用する微生物の違いにより、バイオオーギュメンテーション法と、バイオスティミュレーション法に大別されます。
b)バイオオーギュメンテーション法
有害物質の分解性能に優れた微生物を大量培養し、土壌に注入して行う方法。
c)バイオスティミュレーション法
環境中に存在している微生物に栄養塩等を添加して活性化することにより、有害物質の分解を図る方法。
d)大学等との連携について
沼津工業高等専門学校、立命館大学、近畿大学の協力を得て実施しています。

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センシングバイオ研究部