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2020.5.12

各種モータの用途、形状に合わせた永久磁石の最先端評価技術を確立

 株式会社KRI(社長:川崎真一)は、モータ用永久磁石特性評価の一環として、モータ駆動特性に合わせた磁気特性の評価や、モータ内に組み込まれた磁石の実機ベースでの特性評価技術を確立しました。

背景

 近年、地球温暖化問題や環境問題への関心が高まりつつあり、自動車業界では、各メーカーから多くの車種のハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)が販売されています。
 車載用モータには、発進、渋滞時の走行や、高速運転状態など、広範囲の可変速と連続運転が求められます。
そのために開発されたモータの一つとして、可変磁束型モータがあります。
 可変磁束モータには永久磁石を使用した永久磁石型同期モータ(PMSM)が多く採用されており、正確なモータ設計をする上でも、高効率にモータを駆動させるためにも、モータ内の駆動状況に応じた永久磁石の磁気特性や、モータに組み込まれた状態での永久磁石の着磁状態を調べることが必要になっています。

技術の特徴

 永久磁石型同期モータ(PMSM)を高効率で駆動させるには、モータ内の駆動状況に応じた永久磁石の特性値制御が鍵であり、その特性値を評価することが必要になります。モータ駆動領域に応じたNd焼結磁石の磁気特性として、動作点に応じたマイナーループ(リコイル透磁率)を、BHパルス装置を使って測定することにより、モータ内の駆動状況に応じた重要な情報を得ることが新たにできるようになりました。
 また、永久磁石型同期モータ(PMSM)として、磁石をロータの鉄心内部に組み込む、埋込磁石形(IPM:Interior permanent Magnet)(図1)が多く採用されていますが、モータ回転中に磁石が外れず安全であること、高速回転が可能なこと、磁石の配置、形状の自由度が高いなどの利点が多い一方、磁石をモータ内に組み込んだ後に着磁する必要があるというモータ製造工程上の制約があります。モータ形状の制約上、着磁しても、中に組み込まれた複数の磁石がどの程度着磁されているか不明で、モータ設計段階では、磁石の磁気特性値は完全着磁状態として計算されているものの、実機のモータでの着磁状態が計算通りになっているかはほとんどわからないという問題がありました。しかし、BHパルス装置を使って実機レベルで着磁率を測定することを可能にしました。
 BHパルス装置は、Nd焼結磁石のような高保磁力の磁石を測定する装置であり、他の一般的な磁気測定装置である直流BHトレーサーやVSM装置と違い、保磁力の高いNd焼結磁石の特性値の測定が可能です。そのためモータ等に使用される磁石の測定機器として広く導入されています。一方で、BHパルス装置によるマイナーループや着磁率の評価に関しては、装置構成等の関係で、試料寸法や電流補正などが難しく、正確なデータの取得が非常に困難であると言われてきました。KRIでは、磁石材料と磁気測定に長年携わった研究員が、BHパルス装置の装置メーカーでも実施したことのない測定方法を、装置メーカーと連携を取り合いながら、研究を重ね、詳細なデータの積み重ねと検証を行いました。その結果、困難であるといわれた測定評価技術の確立に成功しました。

応用展開

 地球温暖化問題や環境問題への関心の高まりから、HVやEV用モータはさらに世界的に広がる傾向で、これらモータの設計は非常に重要となっています。
 モータの駆動状況に応じた、あるいはモータに組み込まれた実機レベルでの磁石の特性評価は、モータの性能改善のための一番の要となります。
 自動車メーカーや電機・家電メーカーをはじめ、電力会社、鉄道車両メーカーなどの業界で使用されるモータでは、小型、軽量、高効率化が求められることから、これらの用途での磁石測定評価の活用が期待されます。

用語解説

1) 可変磁束モータ
磁束(磁界の強さ、方向を線の束のようにあらわしたもの、N極からS極へ向かう仮想の線)を変えることのできるモータ
2) マイナーループ
ある動作点から磁界をゼロに戻した時のループ。ループを元に、減磁の程度を調べることができる。
3) 着磁率
磁石のもつ最大磁束密度の飽和点に達する高い磁場を与えることを完全着磁と言い、完全着磁に対して、どの程度の割合で着磁できたのかを示す数値。

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スマートマテリアル研究センター(新素材)